手を繋ぎ思い出を繋ぎ


 それからはわいわいと夕食を頂き、皆で浴衣を着て、夜店に繰り出したのです。


 白人さんが浴衣を着て歩いていると、注目を浴びる浴びる。

 浮田さんたちも相当綺麗なのですが、いわゆる引き立て役です。

 でもなにか浮田さんたち、嬉しそうですね。


「ねぇ、クリちゃん、射的をしない?」

「射的?私得意よ、何でも取ってあげるわ!」

 クリームヒルト、本当に射撃は得意なのです。

 でも本格的すぎて、標的が落ちません。


「私もしてみようかしら」

 とフランソワーズさん。

 店の親父が、熱心に説明しています。


 なにせ疑う事を知らない、超上品な奥様、素直に手を伸ばして、親父の指し示す場所を狙いますと、キャラメルなどが落ちました。

 次に小さいお人形をゲット、最後にガムなども落としています。


 ものすごく喜んだフランソワーズさん、ヴァランちゃんが、キャラメルをもらっていました。

「悔しいわね……」

「クリちゃん、チョコバナナ食べる?」

 いつのまにか、二本持っているお京ちゃん。

 

「あそこに何か景品が置いてある!今度こそ名誉挽回!」

 チョコバナナを咥えながら、一目散に走って行くクリームヒルトです。


 輪投げ屋さんでしたが、六個ほど景品をせしめて、満足したようで、ヴァランちゃんと明子ちゃんに、二つずつ景品をあげていました。

 クリームヒルトの嬉しそうな顔を見て、お京ちゃんも嬉しそうですね。

 

「私も景品を取れそうよ、あそこに扇投げがあるわ、得意なのよ」

 お京ちゃん、本当にお上手で、それこそお菓子を、一杯取ってきました。


「乙女ちゃんにも、あげれそうね」

 と、笑ったお京ちゃん。


 さすがに夕ご飯を食べていますので、食べ物系は避けています。

 

「ねぇお京ちゃん、いつもありがとう、これからも仲良くしてね」

「あそこに面白そうなものがあるわ、行きましょう」


 クリームヒルトは、お京ちゃんの手を取ります。

 その瞬間、お京ちゃんの心臓の鼓動は高鳴りました。


 耳元でクリームヒルトが、

「少なくとも私の手は、お京ちゃんの手を握っているわ」

「私の心も、お京ちゃんの心と、つながっているつもりよ」


「私の手も、いつもクリちゃんの手を握っているのよ、離さないでね」

 お京ちゃん、憧れ続けたクリームヒルトに、やっと告白まがいの返事をしたのです。


 ……私はこの日を忘れないわ、初めて手をつないだこの日を……

 お京ちゃんは、こみ上げる甘酸っぱい思いに、陶酔していたのです。


 翌日、食べ物系の屋台を、総なめした六人の美女と美少女たちがいました。

 ちょっとお色気より、食い気が勝っていたようで、少しばかり話題になっていました。


 FIN


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