クリームヒルトの『S』


「そのままやり直せば、どうなりますか?」

「悪霊は付いていくでしょうから、どこまでも不幸が付きまとうということです」


「分かりました、しかし今を何とかしなければ……」


「この話は、一応クリームヒルトさんの私的な話、クリームヒルトさんのお友達の家の話ですから、私に考えがあります、なんとかしましょう」


 ……


「結果はご想像の通りになりましょうが、なんとなく浮田家のほうが、望むというようにいたします」


「そんなこと、可能なのですか?」

「悪霊を利用すればいいのですよ、浮田の家の人間が、不幸になることを望んでいるのですから、その家の女が、奴隷の境遇に堕ちるというのは、好ましいでしょう」


「悪霊に暗示をかけ、そいつが浮田の女たちに、そのような行動を起こさせる暗示をかける」

「私たちはその後に悪霊を退治、後は望みの『えさ』を、ぶら下げるわけです」


「勿論、茜様あたりには、ご了承をいただかなければなりませんし、バアル・ゼブル様のお耳にも、いれとかなくてはなりません、ミリタリー対策になります」


「この話、蓬莱のハレム設立の準備のためとの名目で、ハウスキーパー事務局にも報告を上げておく必要もあります、でなければサリー様が怖いですからね」


 そんな裏話がありますが、浮田惣菜商店に、宇賀不動産開発合名会社から電話があり、貴子社長は宇賀オーナーに面談、浮田惣菜商店は、グループ会社となったのです。


 銀行の融資や負債は、すべて宇賀不動産開発合名会社からの資金援助で完済しました。


 お京ちゃん、何事も無く学校へ通ってきています。

 が、豹変したのです。


 いつも恥ずかしそうにしていたのですが、このごろは堂々として、しかも堂々と、クリームヒルトの側にいます。


「お京ちゃん、吉川さんの侍女みたい」

 と、クラスメートが冷やかしますと、これまた堂々と、

「侍女ですもの」

 などと返事します。


 キャーなんて黄色い声が渦巻き、その中でお京ちゃんは、更なる問題発言などを続けたのです。

「私、吉川さんが大好き、だからいつも一緒にいるつもり!」


 これでお京ちゃんは、クリームヒルトの『S』と決まったのです。

 でもその後が大変です。


 女神とまでうたわれた二人と違い、クリームヒルトはどこか親しみやすいところがあり、お京ちゃんの『S』宣言の結果もあり、ラブレターが急速に増えてきたのです。


 ……私も『S』にしてください……なんて文面がね……


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