カモがやってきた!


「どうして付き添いの方は帰ってしまったの?」

「叔母さんは忙しいので……」

 益子和子さんが、そのような返事をしています。

 お荷物を早く引き渡したい、そんなところね……


 稲田さん、西田真理亜さんにも、一応聞いていますが、理由はわかっているようです。


 ……


「大丈夫、これからは何事も無いわよ、そうそうこれを付けなさい、生徒は全員つけることになるのよ」

 と、イエローシルバーのリングを左小指につけさせました。

 

 みるみる顔色が良くなっていきます。


 ……やはりね、何かの呪いでしょうかね……よほど怨まれている家系のようね……

 ちょっとマジになった稲田真白さん、天狐の力を発揮しました。


 ……直接原因は母親ですか、ろくでもない女ね……男をかもにしていたようね、そのうちの一人が自殺ですか、その怨念ですね……可哀想に……


 母親は大寒波を乗り越えられなかったのね……でも先祖代々、それなりの事をしてきたようね……だから強烈なのね、父親は……


 集団レイプされた子?それで母親がおかしくなったようね、すこし哀れね……その男ども、生きているのかしら……


 調べてみると、三人ほど幸せに生きているようです。


 ……やはり、これはいけないわね、レイプなんて美子様に知れたら処分されるはず、やはり罰しましょう、神の帳尻は恐ろしいという事です。

 この西田真理亜にかかっている怨念を、振り向ければいいわ、多分死ぬでしょうね……


「益子さんも、このリングをつけてね」

 と、もう一人にもリングを授けます。


「さて、二人ともついてきてね、まず寄宿舎に案内します」

「それから早いけど支給品を受け取ります」

「寄宿舎の二階は改修が終わっていますので、本日より舎監さんがきているはずです」


 でも稲田さん、舎監さんがどんな人なのか、知らないのですよね。

「舎監さんはどこですか!」


 工事でごった返している寄宿舎で、稲田さんは舎監らしき人物を探しますと、とんでもない人を見つけたのです。


「何で茜様がいるのですか!」

「面白そうなことをしているので見に来たのよ、あっ、そこ、その壁紙じゃないわよ、そちらよ、そこ、それは三階のトイレよ」

 いつのまにか、現場監督のように指示しています。


 まったく……


「そういえば舎監さんは二階よ、突貫工事のかいがあって、二階の十五室、定員三十名分は完成したらしいのでチェックにいってるのよ、それで私が代わりをしているの」

 「茜様は舎監さんを知っているのですか?」


 「知っているわよ、宇賀さんから相談を受けて、美子と二人で決めたのだから、真野静香さんよ、知っているでしょう?」

 「そんなことより、美子様と……まさか……」


 「そろそろ美子も来ると思うわよ、クリームヒルトが寂しがっているので、五月の連休にと誘ったら、ついでだからって見にくるって、言っていたからね。」

 

 そんなときに、ちょうど美子さんがやってきたわけです。


 「どう、姉さん、順調?真野さんはがんばっている?」

 「美子様!」

 「あら、稲田さん、ご苦労様ね。」

 「ご苦労様ではありません、お立場をお考えください!」

 このあと相当にお小言を食らった、美子さんと茜さんでした。


「ところで隣は横浜なのね」

「話の腰を折らないでください!」

 さらにお小言を食らった、美子さんと茜さんでした。


「もうその辺でおやめ下さい」

 真野さんが、いつの間にか側にいました。


 確かに潮時ですか……

 そんなことを思った稲田さんでした。


「さて、せっかくお越しなのですから、ここは一番お働き願えませんか!」

「えっ!」

「茜様も逃がしませんよ!」

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