第三章 稲田真白の物語 開校騒動
女学校を買いましょう
稲田真白はある時、宇賀真琴から呼び出しをうけた。
蓬莱に帰ってみるとお仕事が待っていたが……それは女学校の開学準備のためだった。
問題はとんでもなく準備期間がない、その上に教員も職員も、さらには生徒さえも決まっていない。
そんな中、孤軍奮闘しているところにいいカモが飛んできた。
使わぬ手はないと、稲田真白は怒涛のお願いを連呼したら……
* * * * *
四月の第二週、稲田真白は久しぶりに蓬莱に戻ってきました。
惑星ヴィーンゴールヴのモンスター地区にある、籠目(かごめ)高等女学校に転入した、マチ・シズ・ミチの付き添いと、惑星ヴィーンゴールヴのモンスター地区の視察という名目で、長らく蓬莱を離れていたのです。
そこへ突然、宇賀真琴から戻ってくるようにと、辞令が発令されたのです。
「突然で悪いわね、例の聖女女学校の件だけど、前倒しになったのよ」
宇賀真琴が困ったような顔でいいました。
説明によれば、クリームヒルトが一年後の発表を前倒しにし、この四月中には開校すると決定、この月曜には発表するとの事です。
併せて女神に仕える蓬莱の女官制度、蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)も発表となるようです。
「確かに蓬莱社会は受け入れる雰囲気が漂っていますが、聖女女学校は敷地も校舎もまだの上、教員もおりませんが、不可能では?」
「美子様にご相談申し上げたのですが、『すべてはクリームヒルトの責任でやらせなさい』といわれたのです」
「クリームヒルトさんの責任で?」
「そのように言われました」
……
「でも、何とかしてあげたいと思って貴女を呼んだのよ」
「たしかに何とかしてあげたいですね……私、クリームヒルトさんの元担任ですからね」
「でね、考えたのよ、今から校舎など間に合わない、そこで学校を買い取ろうとね」
「内調にお願いして閉校になった、またはなりそうな物件をリストアップしてもらったわけ」
そういって、リストを差し出しました。
稲田真白はリストを眺めながら、
「学制改革でかなり変わっていますが、その昔の女子高あたりのもので、手ごろなのは無いですね……」
「でも、この中から探さなくては……宇賀様、この物件などどうでしょぅか?」
指し示されたのは、ある有名な女子学園が運営していた女子大学、偏差値はかなり低いようですが、東京の近郊にキャンパスを構え、狭いながらも一応施設は整っています。
グランドもあります、ただ寄宿舎がありません、まあ仕方ないでしょうね。
「たしかにこれなら二週間ぐらいで改装できるでしょう、内装の模様替えぐらいですみますから、でも寄宿舎はどうします?」
二人はリストとともに付けられている、詳細な資料を眺めながら、
「ここに交流センターという建物がありますので、これを改修しましょう」
「でも稲田さん、時間がありませんよ、改修では五月の開校には間に合いません、それより隣地に何があるか、購入または賃貸が可能か調べて見ましょう、いよいよなら、このグランドにトレーラーハウスを入れましょう」
とにかく急ぐので、この物件を購入することにしました。
そして隣地に適当な物件がないか、割高でもいいので売り物件はないか、稲田真白さんが探しに行くことになりました。
いいものがあれば即刻交渉です、この際、価格は二の次、お金にものを言わすのです。
その日の午後には、稲田さんは東京近郊の問題の物件を購入、すぐに補修の手配を内調さんに依頼します。
とにかく時間が無いので備品などはそのまま、この女子大学は幸い教養学部だけの単科大学、そのまま使えたのです。
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