提案
現地職員として採用された者は、最初の一年、この養成校で学ぶことになります。
つまり合格すれば現地職員なのです。
三十五歳以下の独身女性で、義務教育終了が入学の条件です。
女神の代理人に仕える人材を養成することになり、専門教育、実技習得が目的となります。
聖女女学校同様、定員はきわめて少ないようですが、どうやらすごい人気のようです。
聖女女学校とは違い、容姿のほうも問われない上に、学費などは雑仕女(ぞうしめ)としての給料が支払われるわけですから、そこから天引きとなりますので、必要ない上に就職は決まっているわけですからね。
蓬莱阿礼少女(ほうらいあれおとめ)の給料は、衣食住が完全に支給される関係上安く、雑仕女(ぞうしめ)が年に金貨一枚百五十万、中雑仕女(なかのぞうしめ)は金貨一枚半二百二十五万、上雑仕女(うえのぞうしめ)は金貨二枚三百万となります。
チタンのリングが支給され、それなりの魔力が持ち主を守ることになります。
しかし絶大な人気の秘密は、森彰子が提案した特典にあります。
「雑仕女(ぞうしめ)たちに支給される、チタンのリングには持ち主を守る防御機能があると聞きます」
「これで病気などからは守られると考えますが、体の悪い方々にも任官できるように、たとえば電子的な補助装具などを、支給するわけには行かないでしょうか?」
人には言えない苦労をしてきた森彰子、社会的な弱者に対して配慮が出来るのです。
この一言が評価され、森彰子は四つの大司教区雑仕(ざっし)養成校の担当を兼務する羽目になりました。
つまりは現地職員の採用担当です。
補助装具は蓬莱ステーションでつくられることになり、森彰子が一人一人にマッチする補助装具の請求をすることになります。
突貫工事で整備した、アジア大司教区雑仕(ざっし)養成校は六月の最終週に開学しました。
まだまだ残工事の最中ですが一期生を迎え入れたのです。
三月卒業ですので、一期生だけは夏休みは無しのスパルタ授業となっています。
先の二十名以外に十名を採用しました。
この十名は頭脳明晰なかたがたですが、小児麻痺の方、目の見えない方、さらには先天的に免疫のない方などがおられます。
内部障害の方は、チタンのリングの絶大な力で一週間で治癒または進行が停止、普通に生活できるようになります。
事故で両足切断の方など、身体の欠損などの方には精密な電子装具を支給、支障なく日々の生活を送れるようになりました。
目の見えない方で、眼球をがんなどで摘出された方は精密な義眼、直接に映像信号を脳に送る優れもので、目がみえるようになりました。
大やけどなど、そのほかの方も、チタンのリングの力でなんなく治癒しました。
森彰子は一期生に感想を書かせました、そして生徒の承諾を得て、公開することとしました。
この一期生の状況と手記が公開されて、ものすごい反響があります。
驚異の医療技術が、紹介されることになったからです。
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