三人のお母さま
この二人は仲がよさそうで、よく一緒に食べに来てくれますが、あるとき、フランソワーズさんが一緒に来たのには驚いた森さんでした。
あまりに雰囲気がかけ離れているのです。
『格子』でもある森彰子は、ニライカナイにも時々行くことがあります。
ゆえにフランソワーズが、どのような人物かは把握しています。
エラムと呼ばれる世界にある王国のひとつ、ホラズムの王族の一人、育ちの良さから来る優雅さは、人を魅了するものがあります。
その上、天然でどこまでも優しい。
エラムは美女の多い星、その中から選ばれたのですから、美貌も折り紙つきなのがフランソワーズ。
さらには夜はそれなり……女性として理想的な人なのです。
「森さん、お元気そうね」
能天気に挨拶などしてくれる、フランソワーズさんです。
「フランソワーズさんもお元気そうで……」
そつなく返事する森さん。
「この方たち、クリームヒルトさんやヴァランティーヌのお友達のお母さん、こちらは『油揚げ専門店コン太』フランチャイズチェーン責任者の森彰子さん」
「クリームヒルトさんのお友達、山野乙女さんと浮田京子さん、明子さんですか、よくいらっしゃいますよ」
山野五十鈴さんが、
「乙女も食べているのですか、スタイルには気をつけるように、いいつけているのですが」
「実は試作品として油揚げのスイーツがありまして、クリームヒルトさんが気に入ったようなので、特別に作っているのです」
「これは私の趣味みたいなものですので、まぁ無料ということです」
「ただ店内では問題があるので、このビルのエレベーター前がロビーになっていますので、そこで食べていただいています」
確かに、いわれればエレベーター前が広い空間になっています。
仕切りなども無く、小さいテーブルと椅子が置かれているだけです。
近くにコーヒーの自動販売機が置いてありますので、ささやかな喫茶ルームといったところです。
この空間は非常にお洒落ですが、お店に来るお客さんはここには入れません。
ビルに用事のある方、もしくはお店の関係者だけが使えるようになっています。
お店からは、裏から出入りするようです。
「ちょっと奥のロビーを使わせていただけない?」
「かまいませんよ、フランソワーズさんは関係者ですから、これからは山野五十鈴さんも浮田貴子さんもどうぞ
「でも時々、『宇賀不動産開発合名会社』に商用で来る男性もおられますので、含んでください」
「なんせ不動産開発業者、それなりの方もやってきますので」
確かにそれなりの方がやってきます、暴力団とかお役人とか、具体的には紀藤会と内調ですけどね。
……それにフランソワーズさんが喋っているということは、チョーカーが許可しているということ、つまり関係者ということですし……
「今日は油揚げのガレットがありますので、よろしければ、ご試食しませんか?」
「あら、いいのですか?」
と、浮田貴子さん。
「お嬢様方が、お食べになっているお菓子を、知っておく必要もあるのではありませんか?」
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