第二章 森彰子の物語 蓬莱転機
『油揚げ専門店コン太』第一号店店長兼務
『油揚げ専門店コン太』の店長、森彰子は忙しそうに働いている。
たくさんの外人さんのお守をしながらである。
とにかく困った女が多く、毎日がトラブルだらけ、いくら美子の頼みといえど、ため息の一つも、つきたくなるが……
そんな日々の中で、よくある出来事が起こり、森彰子は蓬莱の転機に立ち会うことになる。
* * * * *
『油揚げ専門店コン太』の店長、森彰子は忙しそうに働いている。
たくさんの外人さんのお守をしながらである。
とにかく困った女が多く、毎日がトラブルだらけ、いくら美子の頼みといえど、ため息の一つも、つきたくなるが……
そんな日々の中で、よくある出来事が起こり、森彰子は、蓬莱の転機に立ち会うことになる。
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中国地方のある県庁所在地、その駅前にある商業ビル、宇賀ビルの一階に二つのお店があります。
一つはインポート五百円ショップ『ファイブハンドレッド』、世界中からアウトレットやレッドストックをかき集めて売っているようです。
もう一つは『油揚げ専門店コン太』、極めて珍しい油揚げ専門店で、きつねうどんと二種のいなり寿司、関東風と関西風、そして衣笠丼だけのお店です。
結構な繁盛店で、森彰子は最初は店員だったのですが、すぐに店長になり、最近フランチャイズチェーンの責任者に出世。
オーナーの宇賀真琴さんが推薦したのです。
今日は新メニューがデビューします。
といっても『きつね丼』と『きざみうどん』、そして『油揚げと生姜の炊き込みご飯のおにぎり』……
まだまだ候補が有ったのですが、あまりメニューを多くするのも問題があるとの、オーナーの意向で絞り込まれたそうです。
森彰子は憂いを漂わせた美しい女ですが、薄幸の佳人とは程遠い、なかなか芯の通った女。
蓬莱の大天変地異の前に、極道の抗争に巻き込まれ、義父でもあり情夫でもある男が殺さる出来事がありました。
その男に無理やり犯された身としては、せいせいしたというのが本心ではありましたが、そのあと紀藤会という組織の物になってしまったのです。
もうどうにでもなれ!と思っていた矢先、組長に連れられ、瀬戸内のあるホテルへ連れて行かれました。
そして森彰子は、ある女に差し出されたのです。
十九歳の時です。
……あの時、美子様は嫌そうな顔をされていたわね……
森彰子はクリームヒルトの推薦もあり、美子様に抱かれ『格子』となったのです。
主である美子は去年、この地を去り、今では妹のクリームヒルトが全てを取り仕切っています。
……クリームヒルト様は信じられないほど賢い方、さすがに美子様と茜様が可愛がるわけね……
美子がこの地を去る時、森彰子はクリームヒルトのお守を頼まれました。
美子の関係するこの地の女達の中で、純粋の日本人は森彰子だけ、宇賀真琴さんは空狐、宇賀一族は人ではありません。
……たしかに私がしっかりしなければ……
そう、クリームヒルト以下、生活IQは極めて低い女達ばかり、ヴァランティーヌへの美子の配慮で、母親のフランソワーズがやってきていますが、この人は超天然ときています。
そのため、フランチャイズチェーンの責任者でもある森彰子は、この駅前ビルにある第一号店に店長兼務として居るのです。
近頃この『油揚げ専門店コン太』一号店に、常連客が増えました。
山野五十鈴さん、『山野レディファション』という婦人服会社の社長さんです。
『宇賀不動産開発合名会社』に出入りする、業者でもあり常連の一人でもある、『浮田惣菜商店』の浮田貴子社長が連れてきたのがきっかけです。
四十前ぐらいの、モデルかと思えるほどの美女、日本人離れした美しさです。
浮田貴子も、肌のきめ細かい日本人形のような女で、こちらも折り紙つきの美しさ、二人ともとてもその年には見えません。
ただ気の強そうな雰囲気があります。
やはり会社のトップだけのことはあるようです。
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