親睦


 ……もうすぐゴールデンウィークです。

 郷土歴史研究会としては、部員の皆様の研究レポートを、今度の五月の活動報告に載せることとなりました。


 各人なにか一つ、郷土の歴史についてのレポートをお願いします。

 簡単なものでよいですよ……


 顧問の先生が、こんなことをいいました。


「先生、お友達との共同でもいいですか?」

 誰かが聞いています。

「そうね、まぁいいでしょう、皆さんも、お休みをエンジョイしたいでしょうからね」

「では共同研究の班でも決めますか、後から乗っかる人がいそうですからね」

「先生、ひどい!」


 当然のように吉川クリームヒルト、浮田京子、山野乙女の三人は一緒です。

「クリちゃん、部活のレポートだけどなんにする?」

「私、あまり郷土の歴史を知らないの……どうしよう……」


 山野さんが、

「そんな難しいことを書くことないわよ、どこかへ行って、そのあたりの由緒を、書き写してくればいいだけよ」

「とにかく、明日までに考えてこない?」

 ということで、その日は帰宅したのです。


 帰るとフランソワーズさんが、ソワソワしていました。

「どうされたのですか?」

「クリームヒルトさん、茜様がもうすぐいらっしゃるの」

「茜姉様が!」

 

 宇賀さんと一緒に、茜がやってきました。

 でももう一人、思わぬ人がいました。


「クリームヒルト、元気そうね、姉さんに誘われてね、なんとかハウスキーパー事務局に掛け合って、蓬莱で一週間ほど滞在出来ることになったの」

「そういうわけで、美子とのんびり過ごすつもり♪」

 茜さんが言葉を続けます。


「ところでクリームヒルト、女官制度を発足させたと聞いたわ」

 と、美子が聞きました。

「はい、蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)と称します」


 茜が、

「ハレムはどうなったの?」

「……まだそこまでは……」


 美子が、

「まだそんなものは必要ないの!もう十分いるでしょうに!」

 宇賀真琴さんが、少し赤くなっていますね。


「そんなことより、皆でどこかへ行かない?」

 クリームヒルトが、少し困った顔をしたのを、美子さんは見逃しませんでした。


「なにか用事があるの?」

 クリームヒルトは今日の事をしゃべると、美子が、

「その三人って、女官になったのよね……」

「はい、執政官の権限で……」


「その娘さんは、ご両親の許可を得たのかしら?」

「多分いっていないかと……」


「これは一度会って、親睦を深めた方がいいようね、ねぇフランソワーズさん、ご協力願えませんか?」


 この後、フランソワーズさんは、浮田さんと山野さんのお家に電話をかけました。

 

 ……家の娘とそちらの娘さんが、どうも蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)に応募したらしい……しかも採用通知が来たという……


 そうですか……家の娘と一緒なら構わない……私も致し方ないと考えているのです……そうですね、一度皆で集まって親睦会でもいたしますか……これから仲良くしなければなりませんし……


 ゴールデンウィークの初日に、顔合わせをすることになりました。

 

 翌日、

「ママにしかられたわ、でもしかたないって!」

 と、乙女ちゃん。

「うちはクリちゃんが一緒なら、かまわないって♪」

 と、お京ちゃん。

 

 ゴールデンウィークの初日の顔合わせは、女ばかりとなりました。

「はじめてお目にかかります、吉川フランソワーズです」


「こちらは長女の茜、次女の美子、三女のクリームヒルト、四女のヴァランティーヌ、上の二人はアメリカに留学していますが、たまたま帰ってきていたので連れてきました」

「これからよろしくお付き合い願います、とくに下の二人とは、仲良くしてやってください」


 フランソワーズさん、まぁまぁのご挨拶、外人さんなのでこれでいいでしょう。

 でも確かに外人さんですが、世界が違う外の人なのですけど……


 山野さんのお母さんが、

「クリームヒルトさんには、家の娘と仲良くしていただき、ありがたく思っています」

 同じ趣旨のことを、浮田さんのお母さんも云いました。


「娘たちも仲良くしていますので、またこのような機会を持ちましょう」

「そうですわ、娘たちの部活の件ですが、一緒にどこかに行くことにしませんか?やはり大人が付いていけば、一泊ぐらいできますものね」

 と、話がまとまりました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る