蓬莱の守人
五限目は苦手な家庭科……今日はお料理ですね。
「クリちゃん、大丈夫?」
「大丈夫じゃないわ……包丁ってどう持つの?」
「クリちゃん、あぶない!手を切るわよ!」
「それは砂糖よ!塩はそっちよ!」
で、やっと作り上げたのがオムレツ、かなり焦げています。
「もうクリちゃんったら、美子様はとてもお上手だったのに……」
「美子姉様と比べないでよ!」
乙女ちゃんが、「美子様って誰なの?」と聞きました。
お京ちゃんが、
「そういえば乙女ちゃんは、クリちゃんのお姉さまを知らないのよね、クリちゃんは四姉妹なの」
「長女は茜様、次女が美子様、お二人ともこの世の人ではないほど美しいのよ」
「おまけに美子様はお料理もプロ級、吉川の上のお二人は女神と呼ばれていたのよ」
「クリちゃんとヴァランちゃんは、妖精と呼ばれているわ」
「そんなに美しい方なの」
「会えば分かるわよ、でも……」
「夏休みには戻るといっていたけど、美子姉様はものすごくお忙しいから……でも茜姉様はこの五月に戻ると言っていたわ」
「えっ、茜様が五月に戻られるの!」
お京ちゃんが、ものすごくうれしそうな声をだしました。
「お京ちゃん、なんでそんなに喜ぶの?」
「だって茜様って、すこし親しみやすいでしょう?美子様は、それは恐れ多くて近寄れないけど」
「云われれば、そうかもしれないわね……茜姉様って、すこしアバウトですものね」
「そこの三人、授業中ですよ!」
怒られてしまいました。
放課後、郷土歴史研究会の部室に顔を出した三人、新入部員歓迎会も兼ねて、近所の城跡を見に行くこととなり、そのお城の見どころなどを皆で討論しました。
……このお城は文明年間に築城され、標高三百メートル程度の山の頂に本丸を置いています。
落城の時、女性まで戦い、討ち死にしたようです。
特に城主の娘は、どうせ死ぬなら戦って死のうと考え、生き残った女性たちを引き連れ、打って出たといわれています、その女軍のお墓があります。
――岡山の常山城の話――
したがって各自、お花などを持ってきてください。
次の土曜日に行きますので、皆さんは図書館などで詳しく調べてきて下さい。
新部員の方は知らないかもしれませんが、郷土歴史研究会は毎月の活動報告を、パンフレットの形で全校生徒に配っています。
四月号はこのお城の話です……
次の土曜日に、クリちゃん達はこの城跡見学に行きましたが、けっこう山道がきついようです。
「郷土歴史研究会は、体育会だったのね」
乙女ちゃんが、バテバテでこぼしています。
まぁ三人の内、乙女ちゃんが一番の手弱女(ておやめ)という事です。
クリームヒルトは元気いっぱい、でもお墓の前で、なにか一瞬厳しい顔をしました。
乙女ちゃんがこそっと、
「クリちゃん、魔法を使ったのね、なにかいたの?」
「すこしね……でも話を聞いただけよ、聞いてあげたので満足したようよ」
まったく、なんで私がこんなことをしているのかしら……昔なら気絶していたかもしれないけど……やはり宇賀一族と親しくした結果かしら……
このあと、このような事が多々おこるようになったクリームヒルト、どうやら蓬莱の人外の者たちも、守らなければならないようです。
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