蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)


 四つの大司教区から、女神に仕える蓬莱の女官制度、蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)が発表されたのは、翌週の月曜日。

 育成機関が設置されるとの事で、日本の育成機関は東京聖女女学校です。


 卒業生がでるまでは、一般から募集されますが、容姿端麗、頭脳明晰との条件だけで、採用結果は合格者だけに通知されるそうです。


 また待遇も、合格者にだけ説明されるとのことです、よってこの時点で、辞退も出来るわけです。


 蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)とは、次のようになっています。


 蓬莱斎王(ほうらいいつきのみこ)は首席女官長クラス

 蓬莱斎女(ほうらいいつきめ)はその次席

 神聖巫女は『側女』以上

 梓巫女(あずさ巫女)は寵妃候補

 祓女(はらいめ)は『清女(きよめ)』

 舞女(まいひめ)は『末女(まつじょ)』


 だいたいは他の女官と同じようなもの、女神に仕えるので、このような名称になったわけです。

 待遇などもほぼ同じです。


 チョーカーやリングもそのままですが、正式には聖女女学校の卒業生をもって、発足することになっています。

 そのため正式発足までに、蓬莱の女官になった者はおおやけにはせず、身分の証となるチョーカーやリングは、当分不可視となっています。


 聖女女学校は八年制、卒業後は蓬莱御巫(ほうらいみかんなぎ)の舞女(まいひめ)に任官します。

 その為か、蓬莱世界では聖女女学校以外の一般の八年制高女は極めて少なく、聖ブリジッタ女子学園山陽校などは、超エリート女学校なのです。


 聖ブリジッタ女子学園山陽校では、そんな話は別世界の話、朝から入部クラブの話で、ホームルームは盛り上がります。


 結局、クリちゃん、お京ちゃん、乙女ちゃんの三人は、郷土歴史研究会という、極めて地味なクラブに入りました。

 

 お昼に三人で食事をしながら、クラブの事を話し合っていると、ヴァランちゃんが、可愛い女の子と、手をつないでやってきました。


「クリームヒルトお姉さま、明子ちゃんを紹介するわ」

 お京ちゃんが絶句します。

「明子……」

「あら、京子姉さん、何故ここに?」


 明子ちゃんは、お京ちゃんの実の妹だったのです。

 乙女ちゃんがげらげら笑い、そして聞きました。

「明子ちゃん、私たちは女神さまにお仕えしようと、相談していたのだけど、貴女はどう思う?」


「あら、私はヴァランちゃんと一緒に、女神さまにお仕えするつもり、ヴァランちゃんがお姉さまに頼んでみるって、云ってくれてここに来たのよ」


 クリームヒルトは頭を抱え込みました。

 

「私が推薦出来るのは、一番下の位だけどいい?」

 

 ここで明子ちゃんが、「うれしい!」と云いましたがこんなことも云いました。

「お小遣いが貰えるって本当ですか?私、服など買いたいものが一杯あるのです」


 再度、クリームヒルトは頭を抱え込みました。

 

「確かにお給料はでますが、大人になるまでプールされるのよ、だから当分使えるのは本当にお小遣い程度なのよ」


 そんな訳で『舞女(まいひめ)』が三名、誕生したのです。

 シルバーリングなどを、三名ははめていますが、関係者以外には見えなくなっています。

 ヴァランちゃんのリングも、見えなくなってしまいました。

 その為に相当にごねたヴァランちゃんでした。

 

「このリング、本当に見えないのね……女神様のお力ってすごいのね……」

 お京ちゃんがしみじみと云っていますが、乙女ちゃんが、

「クリちゃんはリングをしていないの?」

 と、聞きました。


「私はもう少し上の位なの……ある程度、位が上がると、リングの代わりにチョーカーといわれるものを授かるの……」

「いまもつけているの?」

「見せてあげるわ」

 まぁ、かしましいことです。

 あっというまに、お昼が終わってしまいました。


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