第6話 僕と幼馴染と医師と
さて、僕はいつもの習慣としてこよりと病院に向かう。
駅から徒歩五分、電車の中で首を絞められること二度。
とりあえずところどころ愛情表現として殺しにかかるこよりを制圧しながら、病院に向かう。
この病気は、扱いとしては脳外科らしい。
精神科かと思ったが、どうやら脳の器質的な病気で、外科手術で治るのではないかという研究結果があるらしい。
「うーん、さっぱりわからない」
が、今日もやはり検査をした医師はうなる。
「……やはり、わからない感じですか」
僕が問いかける。
「そうだね。一応こっちの方でも海外の医師と連携は取っておくよ」
先生は父の同級生だ。僕の父親は外科医で、この先生は脳外科医。父の紹介で、こよりはこの病院に通う。引率は僕だ。
「それにしても、愛と殺意が混線するってのは何とも残酷だね」
先生はぼそりという。
「仕方がありません、愛した人がそうなったんですから」
僕は答えた。
「眩しいね、若人」
「ありがとうございます」
そういって頭を下げる。
「んじゃ、また来週。こよりくんは待合室横にいるから、迎えに行ってやりなさい」
「はい、お世話になります」
僕も頭を下げる。
待合室横、隔離するための小さな部屋にはこよりがいた。
「おかえりなさい」
「ただいま」
目につき垂れられようとする指を軽くいなして、僕はこよりと家に帰る。
おしまい
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