第3話

 誘導に従い歩き続けること幾ばくか。分岐点やいくつも扉がある部屋を通り抜けて、空気の違う広間(水晶か何かの結晶が置かれていた)の仰々しい扉をくぐった更に奥。目が回るような渦巻き模様だらけの部屋にあった隠し扉を開いて中に入ると、低いテーブルと椅子が置かれていた。

「いらっしゃい」

 座ったまま出迎えてくる少女の横に、小さな、だいぶ幼く見える子供が一人。その子も巻き込まれたのか、と問おうとしておかしいと気づく。それこそこんな遺跡にこんな年頃の子供が来るだろうか、というやつだ。思わずじっと見る。……見れば見るほどおかしく思えてくる。人としての気配がない。魔力以外の力を感じる。一気に警戒心が高まる。

「あー」

 少女が納得したような顔でうなずく。何なんだ、と思っていると、「この子、神様だから」と言いながら頭を撫で繰り回しだした。

「詳しい説明を要求する」

「もちろん」


 で、長々と話を聞かされることになってしまった。説明を要求すると嬉々として細かいところまで話し出すのはこの少女の特性なのだろうか、それとも魔女一般のものだろうか。長い、端折れ、とたびたび言って少しは削ってこれだからたまらない。

 要するに、ここの遺跡が滅ぶちょっと前ぐらいに生まれた神様が、ここの遺跡が滅ぶ前だか滅ぶときだかに封じられていたのを、この少女が見つけて封印を解いたらしい。神々は自分が居心地よいように世界を作り替えるもので、幼さと封印されてた反動と少女の少しの誘導でこのダンジョンができたとか。

 目標は信者の獲得。手段はダンジョン内での魔物の知性種への進化。人族の改宗はあればラッキーだけど難しそうなので積極的には狙わない。そんな方針を聞かされる。

「それ、本人の意思は」

「了解は取ってるよ、もちろん。結局信者の獲得は必要なんだ……もとの信者はどこにもいないから」

 それはそうなのだろうけれども。しかしこの幼く見える神、どれだけの理解力を持っているのだろう。外見からはいまいち頼りなく見えるが、神なわけで……

「分からないこともいっぱいあるから教えてね、って頼まれたの。かわいいよね!」

 どうにも不安になってきた。


 それはそれとして、そこまで知らされてしまった以上ここから去るのは困難になったような気がする。魔物の進化を狙うなどなかなか許容されるものでもないと思うし。つい勢いで説明を聞いてしまったのが悪かった。やはり好奇心はなんとやら。

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