第5話


「手加減するの忘れた」。

 破壊デ・ストラクションの身長は200を優に超え、剛腕の見た目とは異なり、岸壁魔法を得意とした。

 破壊デ・ストラクションは魔物。しかし戦いを好まない心を優しき魔物であった。

 破壊デ・ストラクションは魔王の瞳を見た……、魔王の瞳を見て恐れ慄き直ぐさま跪く。魔界の純人ならば、生まれて最初に教えれるのは、魔王の濃い赤色の瞳でーーそれこそが魔王の証である。

 破壊した傀儡の破片が魔王の頬を擦れ、破壊デ・ストラクションは死を覚悟した。

「私はもう魔王じゃない。ただの一介の魔物に過ぎない。こんな後も告げない魔王に、そこまでする必要はない。」

「それでも我からの主人に変わりはありません。先代の魔王様の後を継がれた瞬間から、我らは貴方様の魔王なのですから……なんなりと申し上げてください。」

この者勇者とは知り合いなのか?」

 破壊デ・ストラクションは過去に懸賞金目当てのハンターに襲われているところを勇者に助けてもらう。

 魔物なのにーー勇者は決して敵意を向けず、破壊デ・ストラクションを暖かく迎え、寝床まで用意した。

「彼は悪い人間ではありません。もしも彼を殺しならば、私どもを煮るなり焼くなりしてください。そして彼は見逃してください。」

「……安心しろ、いまは殺さんない。然るべき日に償わせる。同胞の仇は必ず果たす。」

 周囲を囲う影の者ーー見えざる存在に言葉を選んだ。 

 勇者を目指せさせる薬草は、破壊デ・ストラクションの自宅にある。また傀儡に襲われたら危険なので、一度、破壊デ・ストラクションの自宅に戻る。

 自宅の中は、薬草で溢れかえっていた。中には珍しい薬草もあり、魔王は「今後の資金源になりそうだ。」と冗談をかます。

「アウェーケニング草」を飲ませれば、数分後には目覚める。

 起きるまでの暫しの間ーーふたりはティータイムを楽しむ。

 だが招かれざる客の世界3大ベルの一つ「天使のベル」により、トリーの森は騒めき出す。

 天使のベルは人間には害はないが、魔物にとっては驚異しかない。迫り来るベルの恐怖から身を隠すために、魔王は勇者を連れて地下室に逃げ込む。

 天使のベルは救いを与える。魔物を専門に始末する修道院協会「ライフ」。修道院No.12による、破壊デ・ストラクションの抹殺命令が実装された。

「私が奴を引きつけます。魔王様はここにいてください。」

 自宅の前まで来たNo.12は、天使のベルを鳴らした。魔王様は苦しみのあまり悶え苦しむ。

 破壊デ・ストラクションは気迫で吹き飛ばし、No.12のもとに駆け出した。しかし天使のベルに対抗手段は無く、No.12を遠ざけることさへ叶わない。天使のベルの回数は早くなる、破壊デ・ストラクションはとうとう地に落ちた。

 魔王は悶え苦しむ自分を鼓舞し、勇者を起こし続けた。

「いつまで寝てるんだ、早く起きろ! お前が起きなきゃ、誰が助けてくれる。」

「………」。

「もう誰も失いたくないんだ……だから頼む。起きてくれ。」

 No.12は破壊デ・ストラクションの祈りを捧げる言葉を告げて、天使のベルを近づける。

 間近で天使のベルを聞かせれば、即死は免れない。しかし天使のベルは鳴る事はなかった。

「その手を離せ…。さもなきゃ、お前も散る事になる。」

No.12は如何なる理由があろうとも、邪魔するものは仲間さへも容赦なく。そして聞き分けない人物のため、周囲からは忌み嫌われていた。だが戦闘面に関しては修道院協会ライフ内でも非常に高く、「天使のベル」を携える事から、修道院協会ライフ内でも上位に君臨する。

なかなかの手練れに、序盤は、苦戦を強いられる勇者であったが、幾千の死闘を潜り抜けた実戦経験はNo.12を上回る結果になり、からくも勇者は勝利を収めた。


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