第4話


 本日未明から朝方にかけて猛烈な超大型ハリケーンF5は勢力を拡大させながら、瞬間風速120の過去に例を見ない史上最強クラスが勇者のいる「ウェルス王国」に直撃する6時間前に遡る。

 勇者の自宅は青空が一望できるほどの大きな穴が空いていた。勇者は倉庫にある一時的な雨風を凌ぐ防水シートを使い、屋根を補給する。

 魔法には4種類に分類し「死力魔法」「岸壁魔法」「天使魔法」「技術魔法」。

 死力魔法……攻撃特化の魔法。

 岸壁魔法……防御特化の魔法。

 天使魔法……回復特化の魔法。

 技術魔法……修理特化の魔法。

 勇者と魔王は死力魔法が得意だが、技術魔法には繊細な部分を求められるので、勇者・魔王とも使いこなせない。

 明日、技術魔法専門業社に依頼したので、それまでの辛抱。

 だが今日来る超大型ハリケーンを防水シートでは不安過ぎるので、岸壁魔法を得意とする知り合いが「トリーの森」に居る。だから連れてくる事にした、魔王と一緒に。

 しかし、魔王は残ると言いだした。人間界の領土の中を彷徨くのは危険過ぎるーーだが勇者は魔王の手を引く。

「お前何を考えている。行くならお前1人で行け⁈」

 お怒りのまま地下室に戻る魔王の手を、勇者は握り「トリーの森」を全力全身で目指した。

 ……超大型ハリケーン王国接近まで残り5時間後に迫る。勇者と魔王は例の岸壁魔法を得意とする「破壊デ・ストラクション」。トリーの森に暮らし、そこは自然とは名ばかりな枯れ果てた森が広がる。木は痩せ細り……動物は1匹も存在しない。

 そんな場所に破壊デ・ストラクションの自宅を訪ねたが留守だった。

 このまま帰りを待つ時間はあまり残されてない。魔王は手分けして探すことを提案したが、勇者は拒否する。

 勇者のわがままなど聞いてられないと、魔王が立ち上がる際に横たわる。

「ふざけている場合か!」

 勇者の顔を見るがーー深い眠りについていた。

 どれほど揺すっても、勇者は起きない。そして、森の精霊の声が魔王の耳に届く。


(我らの森を……その力にて無限の魔力を盾にし……人間を滅ぼす役割を捧げよ……)


 森の聖霊は勇者の魔力に興味津々で、どうしても魔力を欲しい森の精霊は、枯れ木の何本かを「人」の形をした傀儡で仕掛けてくる。

 傀儡の素早さと強度な表面は、如何なる攻撃もはじき返す。勇者を守りながらでは難しいと判断し、魔王は勇者を置いていく。

 傀儡は逃げ出した魔王を追いかけない。目当ての勇者を手に入れたからである。三体の傀儡は、勇者を森の精霊のところに連れていく。

 しかし魔王は再び傀儡の前に現れる。今度は強化させた「覇王の剣」を握りしめて、傀儡を破壊して行く。二体までは破壊できたが、残り一体の傀儡は壊れた二体の傀儡を合わせて、魔王同様強化する。

 傀儡の素早さは魔王が想像するよりも早いもので、傀儡を視界に入る頃には、もう目の前に居る。傀儡の刃が魔王に届く瞬間、強大な力は傀儡を一撃で破壊した。

 傀儡の頭に刺さるのは「大斧」。傀儡を一撃で破壊したのは破壊デ・ストラクションであった。

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