第2話


  「魔王はどこにいかれたのですかねえ?」

 魔物たちの死刑執行を見守る勇者の真横で大臣がボヤいた。

 勇者は死刑執行を見届けて無言のまま立ち去る勇者にそれ以上大臣は何も言わない。それもそのはず魔王が根城にしていた城には王国も手を焼いていた「禁断の魔物」や「上級の魔物」

 を始末できたからである。

王都から少し離れた場所に勇者の自宅がある。周りは何もない殺風景な場所を目指す勇者から少し離れた位置に2人の見張りが嗅ぎ回る。魔王の根城を見張っていた王国の者たちが「魔王だけ」見かけてない事に不審に思い大臣に報告する。大臣は国王陛下には報告せず、独知で勇者を見張らせる事にした。

勇者は自宅に帰って早々地下室の階段を降りていく。地下室の扉を開けた先には魔王が椅子に縛られていた。

「同胞を殺しても飽きたらず、私を犯すまでその怒りは鎮まらないか!!」

この調子のまま食事をとらないこと丸三日。

このまま餓死で死なれても困るので、強引でもいいから城から頂いたお土産を食べさせる事にした。

 高級な国産肉を口元に運ぶが、真横を向いて食べてくれない。なので奥の手として必殺技「匂い」を、使わざるおえない。首を左右に振ることで匂いを近づかせないように足掻くが、最後には勇者のひつこさに負けた魔王は肉にかぶりついて、肉を粗末に扱った。

勇者は放り投げられた肉を拾い、もう一枚の肉をあげる事にした。

「肉に毒を入れられたものなど食べるか!」

そんな事はないと魔王を説得するも聞き入れて貰えず、意地でも食べてくれないので勇者自ら実食する。

一口肉を噛みちぎる勇者の行動に、魔王は目が飛び出るほど驚いていた。勇者は肉を飲み込む、その数秒後に勇者は倒れ込む。

「お前バカ⁈早く吐き出さないと死ぬぞ!」

もがき苦しみ過呼吸する勇者に、魔王は同胞のことを思い出し、差し伸べた手を引っ込める。

魔王はここに連れて来られる時に「あの時の気持ちはまだ諦めてないから」と言われた事を思い出す。

「助けるのは、これが最初で最後だからなぁ。」 

勇者の魔法は心を原動力にしている、心が乱れれば頑丈な紐は緩み、簡単に外れた。魔王は勇者のお腹に手を当てて聖なる言葉を口にする。途轍もない魔力は外で見張る者たちが、魔王の根城で感じた魔王の魔力に似ていることから、すぐ様伝令を送らせた。

「勇者は裏切り者だ。ただちに大臣に報告しろ。」

その瞬間、ふたりの視界は同時に……闇に覆いかぶされた。

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