オッサンの真実④
結婚2年目、一人娘のちひろが生まれた。疲れ切った顔で、しかし優しく微笑む彼女と小さなちひろを見て、私はあることを決心した。
『二人を守るため、今まで以上に仕事を頑張ろう』――今思えば、これが大きな間違いだった。
結婚7年目。ちひろは5歳になり、その頃にはやよいも仕事に復帰していた。私はというと、ちひろが産まれたときに決心したことを胸に、休日返上で毎日仕事に打ち込んでいた。
うまい具合に出世街道にも乗り、いつものように残業を終え帰宅したある日のことだった。
いつもなら寝ているはずのやよいが、珍しく私の帰りを待っていたのだ。彼女はいつものように優しく微笑んで、言った。
「
正直、面倒だなと思った。仕事は家族を守るためにも欠かせないものだ。そんな二択を提示されたら私は――。
「勿論、仕事に決まってるだろ」
ネクタイを緩めながら言った。
「そうよね」
やよいは短く答えて笑った。
翌朝、家には誰もいなかった。
やよいもちひろも、居なくなっていた。
家に残されたのは、私と離婚届、そして、あの日彼女に渡した指輪だけだった。
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