第8話 職場体験決定
通話が終わり、ソファに仰向けになった薫は興奮を抑えるように深呼吸を繰り返した。神谷と話していると幼少期、なにも不安なんてなかった頃を思い出してしまい、いつも時間を忘れてしまう。今回も相談でかけたはずなのに、最後は普通に会話を楽しんでしまった。
横目で壁掛け時計を見れば針は二十二時を過ぎている。
(もうこんな時間。お風呂入って、洗濯物は明日にして、あとは……)
予定を組み立てながら何気なくスマホをいじっていると、メッセージアプリに通知が来ていた。開いて送り主の名前を確認した薫は目を丸くさせる。『
だが、薫は羽賀にアカウント教えた記憶はない。
(電話番号から登録したのかな)
夜遅くに返信は常識知らずかもしれないが、羽賀から送られてきたメッセージの受信時間は十分ほど前。別にいいだろう、と判断した。
羽賀涼介:こんばんは〜
伝え忘れた事あってさ、
勝手に登録しちゃった
羽賀涼介:今日、職場体験の話していたよね?
雇用契約書は正社員のでさ
職場体験期間は↓になるよ〜
◯期間中の給料は-3万円
◯就業時間8時半〜17時まで
◯期間は三ヶ月
(東堂さんが希望すれば六ヶ月)
◯期間中でもスタッフ割使用可
羽賀涼介:働いたことないって言ってたし
色々不安なことあるだろうから
ゆっくりと考えて見て
なんか聞きたいことあったら言ってね
じゃあ、おやすみ〜
文面からも伝わるふわふわ具合に薫はくすりと小さく笑い、画面に指を滑らせた。
カオル:夜分遅くに失礼します
東堂薫です
職場体験の件、お願いしたいと思います
色々と経験不足なので
ご迷惑をおかけするかもですが…
スタンプを送るのは馴れ馴れしすぎるだろうか。
迷っていると既読が付き、すぐさまメッセージが表示される。
羽賀涼介:オッケー!
いつからこれそう?
カオル:私は予定ないのでいつでもいけます
先生達のご都合が良い時に合わせます
羽賀涼介:なら明日からで!
時間は8時半に裏口から入って来て
制服やペンはこっちで用意するから
あ、ペンにこだわりあるなら用意お願いね
分かりました、とメッセージを送り終え、薫は肩の力を抜く。
(思ったよりスムーズに決まったな。ペンは万が一にでも壊したら怖いし、明日にでも買いに行こう。あそこの本屋さんなら朝早くからやっているし。あとメモ帳もいるな。他に……あっ、悠ちゃんに連絡いれとこ)
神谷に職場体験が決まったとメッセージを送り、薫は就寝の準備をすべく風呂場へと向かった。
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