第387話 そして、三門へ(9)
俺は防衛戦の下準備として、遊郭へと足を運んでいた。
目的はもちろん彩羽、ラフレシア、七夢さんとの作戦会議だ。
まず俺が質問をしたのは、なぜこの起こるはずのないイベントが発生したのかだった。
現在『最果ての斑鳩』を制作した『
このイベントは何らかの時限式プログラムなのか、ただのバグか、それとも人為的なモノなのか。
その答えは七夢さんによって、いともあっさりと明かされてしまう。
「もちろん、私が仕込んだのよ。色々と準備をしてたって言ったでしょ。月の目による記録が残っても、私があなた達を守ってみせる。それが私の勤めであり、大人としての務めよ」
ふむ。
七夢さんがそう言うんだから、きっと何とかしてくれるんだろう。
ってぇことは、レーナ時代のスキルも堂々と使えるってことだ。
「そいつぁ、ありがたい限りだ。んじゃぁ、これはアレか。俺を魔王にした時と同じ、まさに最後の大一番ってやつか」
「そうよ。だからあんたは、必ずハチ子さんを見つけなさい」
「了解したぜ」
しかしまぁ、なんか既に懐かしいな。
なんだかんだ楽しかったこの世界とも、おさらばか。
突然にして冒険が終わる感覚も、あの時と同じだ。
まぁあの時はめっちゃショックで、闇堕ちしかけてたわけだけど……
じぃーっと、ラフレシアと彩羽を見つめる。
「なんダ?」
「どうしたの、あーにぃ」
カカカ。
あぁ、あの時とは違うな。
今の俺には、心強い仲間がそばにいる。
あとは何も考えずに、ハチ子を助けるだけだ。
それだけなら、あの時より全然楽勝じゃないかとすら思えてきた。
「いや、なんでもねぇよ。あぁ、それより七夢さん」
「なにかしら?」
「あの……前に話した凛って娘……あと、白露もか。会ってくれるか?」
「あぁ例の子ね、了解。こっちから、コンタクトを取っておくわ」
「それ助かるわ。そっちは任せるよ」
さて……凛たちとの約束は、これで大丈夫。
七夢さんと話すことができれば、あの二人が何なのか色々とはっきりするだろう。
「じゃあ、あとは細かい作戦の内容だな」
「ソレな。ちぃとばかし、オレに考えがアル」
「ほうほう、どんな?」
しかしラフレシアは、首を横に振る。
「教えないゾ。アキカゲはその場の流れで、臨機応変に行動してクレ。その方がこの作戦は、うまくいくと思うンダ」
「なんだよ、それ」
「要は、あーにぃには期待してるよって意味だよ♪」
なぜか、ラフレシアの肩をもつ彩羽さん。
ほんとに仲良くなったな、この二人。
これが共同生活の成果なのかもしれない。
「まぁいつも通りでいいってんなら、そうするけどよ。期待に応えられなかったら、恥ずかしいんだが」
「大丈夫だよ。だってあなたは、あーにぃなんだもん」
満面の笑みを見せる女神に対し、俺は頭を掻きながら曖昧に頷いた。
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