第384話 そして、三門へ(6)

「でけぇ街だな。門までどんくらいあんだ」


 目を細めて、街の中心にある木製の門を見据える。

 世界を分かつ壁も巨大なら、門も大きい。

 考えてみれば、今は都留部の街が防衛ラインなのだから当然といえば当然だ。


「旦那」


 いつの間にか白露が横に並んで歩いていた。


「凛ちゃんから話は聞いてる。拙者と凛ちゃんは派手には動かんが、必要なら手助けはする」

「そっちの要望は、管理者との対話だな」

「うむ。まぁ対話は、拙者より凛ちゃんの方が向いてそうだが、まさにそれよ」


 なんだよ七夢さん、ここでも人気者だな。

 まぁ俺の目的はハチ子の救出だし、それに集中したいってのが本音だ。

 他の面倒事は、専門家の七夢さん達に任せるべきだしな。


「とりあえず拙者は宿に篭るが、それでいいか?」

「うぃ。なんかあったら連絡するぜ」

「それが助かる」


 律儀に頭を下げる白露。

 凛の言う通り本当に引き篭もりなんだな、とニヤけてしまう。


「秋景どの、私たちはこのまま門へ?」


 刀華がぴょこりと白露を押し退けて、見上げてくる


「あぁ〜まぁ一回は見ときたいが……」

「馬鹿じゃのぅ。今はそれよりも、さっきのアレを調べる方が先じゃろう」


 今度は凛が、ぴょこりと俺の頭に飛びつく。


「うわ、こらっ」


 ……とバランスを崩しながらも、凛を落とさないように肩車をする形で固定する。


「な、何してるんですか、このっ……」

「増援の兵以外は街には入れないと、さっき言っておったじゃろう。つまり、何か不測の事態が起きているということじゃ」

「こら、秋景どのから離れるのです!」


 刀華が無理やり引き剥がそうとするが、凛の体幹が強すぎてびくともしない。

 ちなみに俺は凛の実力を知っているので、既に諦めモードである。


「まずは何が起きているのか、門に向かいながら調べるのじゃ。ハイヨー、シルバー!」

「俺は馬かよ」

「主は色男じゃから、種馬の類じゃがのぅ」


 ポクポクと刀の鞘で叩かれてしまう。


「よく言うぜ。だいたい俺は、そんなにモテませんけどねー」

「よく言いますよ、ほんと」


 ウンウンと隣で頷く刀華。

 さすがは、よく分かってらっしゃる。


「まだそんなこと言うんですか、って感じです」

「こやつ、真にアホだのぅ」

「そこがいいんですけどね」


 なぜだか呆れる二人に、俺は首を傾げて返すのだ。

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