第383話 そして、三門へ(5)

 俺と刀華の旅は、数日続いた。

 旅の途中で右手に巨大な壁が見え始め、その壁に沿って進み続けると、ようやく『 都留部つるべ』の街にたどり着いた。

 街の規模は雑賀以上で、壁に面して半円状の形に広がっている。

 半円の中央には、木製の巨大な門が見えていた。

 あれが三門……俺と刀華の、旅の目的のひとつだ。


 この世界の中心には『魔界への穴』があり、その穴を囲うように『円環の檻』と呼ばれる、いくつもの防壁と門が作られている。

 俺たちが旅してきたのは『第三の円環の檻』エリアだ。

 激戦区となっているのは三門を超えた先にある『第二の円環の檻』エリアで、中華風の世界観になっているらしい。

 そこは妖魔軍との戦闘が激しく、将軍クラスも多く出現する。

 つまり妖魔軍の将軍、幻影剣の綾女と会える確率も高くなるってわけだ。

 まさに俺たちの目的地なわけだが……


「秋影どの、何やら雰囲気がおかしいような?」


 刀華も気づいたのだろう。

 街の入り口には関所のようなものが出来ていて、どこか物々しい雰囲気だ。

 なんというか、空気がピリついている。


「おぉぃ、凛。ありゃなんだ?」


 少し後ろを歩いていた凛に聞いてみる。


「さぁのぅ。妾が前に立ち寄った時にはなかったが」


 凛が白露の方に目を向けるが、白露も知らないといったジェスチャーで返してきた。


「まぁ、とりあえず行ってみよう」


 そう言って近づいてみると、兵士っぽい男がすぐに反応してきた。


「待て、止まれ。お前は旅人か?」

「あぁ、まぁそう」

「訳あって今は、増援の兵以外は街には入れない。すまないが帰ってくれ」

「増援? なんかあったのか?」

「説明する必要はない。いいから、帰れ」


 まさに門前払い、取り合ってもくれないとはこの事だ。


「待て。某達の身分は保証されている」


 刀華が俺の横から割って入ると、木札を印籠のように見せつけた。

 

「それは……七支刀の剣士様っ!?」

「そうだ。この男も、後ろの二人も持っている」


 おぉ……すっかり忘れていたが、アレは試験でもらった『七支刀印の通行手形』じゃないか。

 三門を通過するために必要だったわけだが、確かにここでも効果がありそうだ。

 それなら……と、俺と凛、白露も木札をプラプラとして見せつける。

 すると兵士は顔色を変えて、頭を下げ始めた。


「これは、失礼しました! どうぞ、お通りください!」

「お、おう」


 なんか気持ちいいが、なんか申し訳ない。

 俺はそんなに偉くないしな。


「秋影どの、何も聞き出さないでいいのですか?」

「あぁ。情報収集は中で、分担してやろうと思う」

「なるほど。了解しました」


 なんだろう、この相棒感。

 すごくしっくりくる。

 とにかく俺たちは、関を抜けて都留部の街へと足を踏み入れた。

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