人混みに紛れてふっと消えてしまいたいと思う瞬間、僕の命はどこを浮遊しているのだろう。


 人々が集まる駅では、お互いのことも知らずにすれ違っていき、時に追い越し追い越され、誰かとぶつからないスレスレの道を歩いていく。


 大勢の人がいることは確かだが、もし今ここで僕が溶けて蒸発したとしても、誰も気にとめないだろう。


 周りにいた数人は不思議がるかもしれないが、何事もなかったかのように歩いて立ち去っていくに違いない。


「たまにはこっちにおいでよ」


 すれ違い様に仄かに柔らかい香りと若い女性の声がした。電話でもしていたのだろうか。僕の人生においてあのような人が登場することはなかった。


 僕の人生をプログラミングしたのは誰だったのだろう。





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