足跡




 何かの足跡が玄関扉から外に出ていた。人間の足跡のようだ。爪先から踵まで真っ白だ。10歩ほどある。


 私が歩き始めると、足跡の先にさらに新しいそれらが浮かび上がり、振り返るとそれらは消えている。


 何だろうと思いつつ、いつも通り駅まで歩く。あれ、私の進む方向に足跡が続いている。まるで足跡を辿っているようだ。他の人には見えていない。


 やがて仕事場についてしまった。足跡はご丁寧に自分の席までのびている。席を立つ度に、足跡は生まれては消え、生まれては消えていく。


 夜、仕事場を出ても、見えにくいが確かに足跡は私の前に現れる。


 信号のない横断歩道に差しかかったとき、足跡の数が減った。


あれ……?


先のない足跡に急に不安が募り、

私は自然と立ち止まった。


すると、猛スピードの車が目の前を走り去っていった。


足跡は、もう消えていた。





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