ある日、僕は自分の影に

「僕と君、交換しようよ」と言った。


影は快諾し、僕は喜んで僕を捨てた。

僕は“影”になり、影が“僕”になった。


“僕”は僕よりもかなり優秀だった。ずっと側で僕を見てきたからだろう。何のミスもなく仕事をして、周りの信頼を得ていた。まるで別人になったみたいだと言われていた。


それもそうだ、僕はこの世界に疲れきっていたんだ。もう嫌になったんだ。だから影にお願いして、“影”になった。


僕は何年も“影”として生きていた。

影は何年も“僕”として生きていた。


あるとき“僕”は死んだ。

死んでしまった。

けれど“僕”は死んでも、僕は生きていた。

“僕”が骨になっても僕は生きていたんだ。


僕は骨の“影”として何故だか生きていた。

人々の話し声が聞こえてくる。

しかしそれは“僕”のことであって、

僕の話なんて1つもなかったんだ。





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