第118話 第六章 目覚めしタブレットの守護者は、優雅に踊る。(15)

 ◇◇

 攻撃ヘリの一斉射撃を、すべて目前で破裂させているミリアムを見て、正直ちょっとビビった。

 あれが、わたしの知っているミリアム・・・?

 わたしの胸の中では、まだ信じられない気持ちが残っていてモヤモヤしてる。

 でも、これは現実なんだ。

 どうして? なんで? 友達だったんじゃないの? いろいろな疑問が渦巻いてわたしのアタマの中はぐちゃぐちゃだ。

 でも、いまはそんなコト言っている場合じゃない!

 しっかりしろ、わたし。

 だって彼女がクーリア・ロマーナならば、必ずここにいる我々をタブレット争奪戦の敵と認識して、殲滅しに来るに決まってるもの。

 ハチもここにいる以上・・・負けるわけにはいかないのよ!

 上空を見上げると、連射していた攻撃ヘリ部隊も意味がないと諦め、射撃を止めた。

 攻撃ヘリが陣形を解いた瞬間を見逃さず、わたしは詠唱する。

 十メートル上方の高架線路の桁に瞬間移動、聖槍をミリアムに向け、そのまま空気を超高圧縮した矢を放つ! 行っけー!

 この矢は、戦車の複合装甲も貫徹する術式だ!

 放つと同時に二十メートル反対側の装甲車の天井に瞬間移動、また矢を放つ。

 さらに瞬間移動を二回繰り返し、同様に矢を放つ。

 ほぼ一瞬にして全方位の四方向から、超高圧縮空気の矢が襲い掛かる

「無駄よ! ヴィオラ!」

 ミリアムは瞬時にフィールドを全方位に展開、全弾をほぼ同時に粉砕する!

「やっぱ、タブレット・オリジン装備を相手にするのは・・・骨が折れそう」

 わたしは五十メートル離れた攻撃ヘリの残骸に身を寄せながら、思わずぼやく。

 でもその光景を見て確信したことが二つある。

 まず、スピードでは勝っている。

 本来は小さなフィールドを使って、四方から繰り出された四本の矢を次々に順次粉砕すればいいはずだ。だがそれには、わたしの様にヒトでは為し得ない反射速度が必要だ。

 それをせずに、体に負担のかかるフィールドの全方位展開を使って、まとめて粉砕したということは・・・反射速度が追い付かないと見ているのだろう。

 ま、パワーは負けてるけどね(そもそもヘリのローターを素手で千切るのよ?)。

 もう一つ、わたしの魔術は、クーリア・ロマーナのタブレット・オリジン装備に勝っているということ。

 魔術はディア・マギアに与えられたもの。

 つまり超古代文明を完全に使いこなす。

 いっぽう、彼らのタブレット・オリジン装備も、ルーツは超古代文明の技術ではあるものの・・・魔術には遠く及ばない。

 クーリア・ロマーナといえど、タブレットの情報をすべて解読出来ているわけではないからだ・・・むしろ解読出来ている範囲のほうが遥かに少ない。

 その差は大きい。

 だから同じ魔女でも、ディア・マギアは『現代に複製されたパチモン』とは出来が違うハズ。

 ・・・ハズなんだけど、正直苦戦しているのは間違いない。

「ヴィオラ! どうしたのかしら? もうおしまい?」

 ミリアムの声が響く。

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