第117話 第六章 目覚めしタブレットの守護者は、優雅に踊る。(14)
◇◇
「マグダレーナ、まず難敵アルティフィキャリスから撃破しろ」「あいつを片付ければアメリカ軍の排除は容易い・・・アルティフィキャリスの魔術が凄いといっても、ボディー自体は生身だという分析結果だ。だからお前の破格のパワーを活かして攻撃を仕掛けろ」
ミリアムのイヤーウェアから、ツァイツラーの指示が飛ぶ。
その光景を間近で見ていた内田は、モーデルに歩兵をいったん退かせるように伝え、上空に待機中の国防軍のAH六四E攻撃ヘリに指示を出す。
「いいか、マップにマーキングしたクルマには奪還対象が載っている。そこを外してマグダレーナに対し機銃掃射を加えろ! 射撃手! FLIRセンサー(前方監視赤外線装置)に切り替えてうまく狙え!」
指示通り、AH六四E攻撃ヘリはミリアムを中心とする上空の円環状に位置を取り、機首下部にあるターレットから三十ミリ機関砲の射撃を開始する。
超低空をホバリングするので、地上に猛烈な風と轟音を引き起こしている。
激しい射撃音が連続して夜の空間に轟きわたり、路面を散々に撃ち抜いていく。
もし三十ミリ機関砲が人間に当たれば、粉々に千切れ飛んでしまう。
だが、凄まじい射撃音と共にミリアムに襲い掛かった砲弾は、彼女の周囲でことごとく『見えない壁』に阻まれ爆散!
効果が無い!
クルマの影から確認する内田が舌打ちをする。
タブレットを積んだクーリア・ロマーナのクルマがそばにある以上、対戦車ミサイルまで使うわけにいかない。もっとも対戦車ミサイルでさえ、効くかどうか疑わしいが。
内田の反対側に、さきほどまでアメリカ軍に包囲されつつあったクルマがある。ツァイツラー一派は、相変わらずその中に身を隠している。
サネッティの耳元で囁く。
「さすがミリアム。あのフィールド見た? わたしたちが使うフィールドとは比較にならないほど強力で広範囲のものよ。あれを使った電磁ビーム照射も凄いはずよ」
「フランチェスカに聞いたんだけど。フィールドは人間が使うとき、その者の細胞内に蓄積されている生体エネルギーを転用するって」
「だから義体の生命力は、人間とは段違いに強力だってことよ」
「それよりどうする? ヴィットーリア」
運転席のサネッティは、流血を拭いながら聞いてくる。
「どうするって言っても、アメリカ軍に包囲されているし・・・上空には攻撃ヘリが大挙している。衛星からのレーザー砲撃はここを避けるほどの精度が無いから使いたくない。っていうことで、装甲を施したこのクルマの中がいまは一番安全よ」
ツァイツラーのほうも、ヴィオラに殴られた傷をさすりながら淡々と続ける。
「まあ安心なさい、そのためのミリアムでしょ。アルティフィキャリスもアメリカ軍も一掃してくれるわ」
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