第113話 第六章 目覚めしタブレットの守護者は、優雅に踊る。(10)
轟音と共に数十メートル先に着弾の雨が降り、砕けた路面の破片が大量に飛び散る。
それらが車のフロントモニターに当たり、視界を遮る。
サネッティ少佐はそれも気にせず、右、左、ストップ&ゴーを見事に織り交ぜながら弾道から逃れていく!
だが、その回避運動のためにメルセデスAMGは、スピードをかなり落とさざるを得ない。
「ち、こっちにはタブレットと人質があるっていうこと、分かっているんだろうなあ! ヘリの三十ミリだとカスってもこっちは吹っ飛ぶぞ!」とサネッティが毒づく。
「もちろん当てる気は無いけれど、足止めをしたいんでしょう、あるいは誘い込む気か」
クルマの中で激しく揺れながら、ツァイツラー大佐が冷静に言い放つ。
事実、内田少佐は、お台場テレコムセンターに向かう広大な直線路に追い込みたかったのである。
そこには、先手を打って集結させてある日米両軍の車両がバリケードを築いている。
メルセデスAMGは、青海一丁目交差点を左折に追い込まれる。
相変わらず、片側五レーンもある広大な直線路だ。だが路肩には、いつもそうなのだが、巨大コンテナを搭載したトレーラーが数多く路上駐車している。
右にゆりかもめの高架式線路が立ち並び、角度によってはヘリからの射角を遮るが、ヘリも主動射撃に切り替えており、器用に威嚇射撃を継続している。
執拗に、空中からの機銃音があたり一帯に轟く。
もう数百メートルでバリケードだ。ここから見えている。
「上手いこと追い込んだぜ。チャンスだヴィオラ! 追い付けるぞ!」
内田が叫ぶと、ヴィオラが小さく頷く。
内田は手ごたえを感じた。この先レーン全体にわたり、日米両軍の車両が群れを成して何重にも壁を作っているはずだ。
さすがにこれでは突破出来まい。
バリケードは全て装甲車両なので、体当たりをして相手を必ず止める!
「ウチダ、追い込んだな! これで止められるぞ!」
先回りして待ち構えているモーデル中佐も無線から叫んでくる。
と、その瞬間!
内田の眼前に、上空から一筋の青白い光が突き刺さり、バリケードの軍車両三台が一瞬で蒸発した!
瞬間世の中から音が消えたかと思うような、静寂。
続けざまに、上空のAH六四Eが三機炎上して墜落してくる。
そのまま、ゆりかもめの線路に激突して大爆発!
炎上が重なり、大音響と共にヘリが爆散し、高架線路も崩れ落ちる。
バリケードの車両も次々蒸発する。
「いかん!」
モーデル中佐が叫ぶが、手の施しようがない。
まもなくバリケードが一部消滅してしまう!
内田もモーデルも、衛星軌道上のレーザー砲撃ということがまだ理解出来ないため、事象そのものを飲み込めず、無残に焼き尽くされた車両やヘリの残骸に呆然とする・・・。
だめだ、やはりクーリア・ロマーナは歯が立たない相手なのか!
「やれやれ、『保険』を使うとはね。でもまあ良かったわ」
回避運動を取っていたメルセデスAMGの助手席で、ツァイツラーが涼しげに呟く。
衛星軌道上からのレーザー砲撃、すなわちクーリア・ロマーナが『現生人類未到達技術』を兵器化した技術の前に日米両軍とも為す術が無かった。
だが、ツァイツラーがほくそえんでいるのとは好対照に、内田はまだ諦めていなかった。
気が付けば、回避運動をしてきたメルセデスAMGに数メートルのところまで迫ることが出来ている。なにがなんでも体当たりを敢行して止めてやる!
内田がヴィオラにそう指示しようと思った矢先、逃走車を睨んだままだったヴィオラが叫んだ。
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