第65話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(23)

 その、パレオロゴスが突如この東京に現れたのだ。

 正直、ツァイツラーの心中は穏やかではなかった。

 なにせ過去パレオロゴスとは、たしか・・・六戦全敗中だ。

 なぜかパレオロゴスが現れると、タブレットに先回りされてしまうのだ。

 理由は分からない。

 タブレットが目に見えない波動を出して、あたかもそれに吸い寄せられる様に、必ずパレオロゴスが先にタブレットを発見してしまうのだ。

 しかも彼女は、『科学で説明出来ない力』を使役することが分かっている。

 クーリア・ロマーナの技術力でも説明が不可能な力。

 まるで、そう、まるで『魔術』なのだ。

 そのパレオロゴスが現れたとなると、目的は一つだ。

 アメリカ軍が持ち込んだニネヴェのタブレットに・・・他ならない。

 なんと厄介なパラメータが増えたことか、しかも戦闘力不明のパラメータだ。

 さて・・・どう対応するか。

 正直気が重いが、名戦略家の彼女はジャブを打ってみることにした。

 作戦立案の際の不確定要素を除くために。

 ・・・そこへ、メーラーからの通知に気が付いたツァイツラーは、ちょっと驚いて声を上げる。

「エレオノーラ! 例の開発中の義体をこちらに回すらしいわよ」

 背後で部下に指示を出しているサネッティは、『義体』という単語に驚き思わず振り返る。

「ええっ、もう? 早くないですか? しかもこの極東に?」

「ええ、フランチェスカから命令書が送られているわ。閣下のサイン付きで」

 二人でメールの命令書を覗き込む。

『義体が明日〇九三〇時に羽田空港に到着、そのままツァイツラー武装親衛隊大佐麾下に編入、以下に記載する特殊任務に投入せよ』

 後続の『特殊任務』の内容を見て、サネッティが思わず唸る。

「なんとも意味の分からない命令ですね・・・」

「おそらく・・・情報収集でしょうね」

「なるほど」

「エレオノーラ、明日からあなたが直接面倒見てやってちょうだい」

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