第64話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(22)

【五月二十一日 午後十時二十分 新宿 カトリック中央教会】

 相変わらず、機材と人員と騒然さに包まれた武装親衛隊の司令部で、ツァイツラー枢機卿の作戦立案は続いている。

 三台の大型液晶タブレットPCを並べ、スタイラスを滑らせながら膨大なデータを次々に検証している。

 データに囲まれているのは、いつものツァイツラーである。

「今回は堅実性が求められる・・・エカテリーナ閣下は、ほら、超が付く負けず嫌いじゃない? ニネヴェで一杯喰わされているし、連敗はまずいでしょ」

「すみません・・・そうですよね」

 ニネヴェで失敗したサネッティが俯く。

「エレオノーラ、いちいち気にしないで。次戦で挽回すれば良いんだし、閣下もそれを望んでいらっしゃるわ」

 ツァイツラーは、手に持っているボールペンをくるくる回しながらフォローする。

 今回は日本の首都での作戦。

 陸戦兵器はもちろん使えない、市街戦を戦うわけではないのだ。

 とすると、極めて精巧な動線とスピードを軸にする。

 日米両軍を相手にするし、相手は物量に優れ、地理や天候にも明るい。

 ここは武装親衛隊にとっては、完全なアウェイなのだ。

 だが、タブレット・オリジンの装備がある。『レーザー』『インヴィジブル』『フィールド』を上手く活用すればいい。

 あとは、不確定要素として依然残っている少女ひとり、いや、昨日ひとり増えてふたりだ。これらをどうするか。

 そう、第二の少女について、武装親衛隊は良く知っていた。

 忘れることの出来ない顔。

 クーリア・ロマーナ武装親衛隊は、過去三年間にわたり、世界中で何度もタブレットの回収に成功してきた。もちろん失敗もあったが。

 作戦の失敗を分析する過程で、彼らは気が付いた。

 どうやら彼ら同様、タブレットを回収している組織が存在する事に。

 しかもその組織は、自らを『タブレットの守護者』と自認している。

 クーリア・ロマーナの情報網を駆使しても、確たる正体が分かっていない組織だ。

 当然、過去何度か遭遇し、タブレットの争奪戦になっていた。

 その遭遇の際には必ずある女が現れており、その女が現れたとき武装親衛隊は、タブレットを奪取されてしまっている!

 いまや仇敵中の仇敵と言えるその存在。

 女の名は『パレオロゴス』。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る