第63話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(21)
ブリュンヒルトは、そう言って微笑むと急に話題を切り替える。
「それでヴィオラを残していくんだけれど、条件というか・・・お願いがあるの」
「どんなことだ?」
全く想像がつかず戸惑う俺に、次の瞬間、意外なセリフが出てきた。
「ヴィオラを学校に行かせてね」
「へ?」
我ながら間抜けなリアクションだ。
深呼吸をして、言葉をゆっくり呑み込んで理解した。
そのとき、ヴィオラが直感で年代測定結果を言い当てたことを思い出した。
「・・・だけど、学校に行く必要あるのか? 先日気が付いたんだけど、なんかめちゃめちゃ頭良いっぽいぞ?」
「わかってないのねえ・・・。お勉強の話じゃないのよ。せっかくのチャンスになるのだから、彼女を『普通の女の子と同じ環境』に置いておきたいワケ」
「せっかくのチャンスって?」
「西郷。ヴィオラはいま、自ら進化しようとしているの。だってそうでしょう? 今回の件で彼女は、いままで見せていなかった感情を表現出来るようになったのだから」
「・・・・」
「その要因はタブレットのせいかもしれないけれど、『あなたという普通の人間との普通の暮らし』かもしれないとも考えている。だから彼女には極力、年齢相応の『普通の女の子』として暮らして欲しいのよ」
「なるほどね」
聞いてみれば分からない話ではない。
「いままではディア・マギアとして、わたしと共に世界中駆けまわって発掘とか戦闘ばかりだったのよ? とてもとても普通の女の子の環境じゃなかったから、今回はチャンスかなっと・・・だから、この娘の成長を見届けたいわたしにとって、これは大事なことなの」
そして、トドメの一言が。
「・・・イヤなら、やっぱりヴィオラを連れてっちゃうから」
「わ、分かった!」
それを聞いて横からヴィオラが抱きついてきた!
「ハチ! ありがとう! マスターの言うとおりちゃんと学校に行くね!」
「あらあら」
微笑ましいといわんばかりに、ブリュンヒルトが覗き込む。
「ヴィオラ! ちょっ・・・落ち着けよ」
「さすがハチ、これからもよろしくね! いっぱいサービスしちゃうから!」
サービスって・・・いやなんかヨロシクナイ妄想までしちゃうんですけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます