第60話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(18)

「わたしのスレイヴであるこの娘は特別製。おそらくタブレットの製造直後から、気の遠くなるような年月にわたり、何代ものマスターに仕えてタブレットを守護してきた。頭脳も戦闘力もわたしと同クラスだし。特にタブレットに繋がることに関しては」

「・・・繋がる?」と言いつつ、俺は横にいるヴィオラをちらと見る。

「そう。彼女はわたしよりさらに強くタブレットと繋がっているの。例えばタブレットの中身をインストール出来たり」

「!」

 閃いた。

 そうか、ヴィオラが初めて来たとき部屋でタブレットを見ていたし、惹かれたとも言っていたな・・・それにしても『タブレット製造直後から』って・・・。

『特別製』か・・・。

 キャラが一晩で豹変したのも、なにかタブレットと関連があるのかもしれない。

 さらに質問をしてみる。

「・・・だがタブレットが過去に、代々の古代文明を導いてきたというのなら、我々も恩恵にあずかることが出来るのか?」

 別の質問をすると、ブリュンヒルトは再び影のある顔を見せて呟く。

「互いに殺戮兵器を向け合わないと、かりそめの平和ですら手に入れることの出来ない現生人類ホモ・サピエンスに、この技術を渡せるかしらね」

 なるほど、ブリュンヒルトの言うことは正しい。

 原爆開発『マンハッタン計画』のロバート・オッペンハイマーがどう言うか知らないが、原子力の実用化の際も過ちを犯したのだ、我々現生人類は。

「きっとあなたたちから見れば、わたしたちの使うタブレットの技術は、あまりにも進んでいるために『魔術』に見えるのでしょうね」

「・・・・」

「クーリア・ロマーナにもアメリカにもタブレットを渡しはしない・・・のだけれど・・・あなたが持つタブレットを渡してもらうわけにはいかなさそうね」

「申し訳ない、ホントに。いくらヴィオラのマスターである君の頼みでも・・・無理なんだ。なにせ、正確には俺の所有物じゃないしな」

「さて、ヴィオラ」と、ブリュンヒルトはヴィオラの方に向き直る。

「あなたには、わたしと一緒に戻って欲しいんだけれど」

「げっ」

 聞いた瞬間「やはり、そう来たか」という感じで、ヴィオラが体を硬くした。

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