第57話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(15)
だが、理性で分かってはいても、感性ではなかなかに抵抗があった。
「・・・もしかして俺を騙している?」
だが、ブリュンヒルトは笑いもせずに一蹴する。
「まさか・・・わたしがあなたに、こんなに手の込んだお伽噺を聞かせるメリットなんて、何も無いでしょう? それに、今こうして大英帝国博物館にいる事は・・・どう説明するの?」
「・・・そうだよなあ。まあ、お伽噺であるほうが気は楽なんだけどな・・・しかし、なんてこった。あの粘土板はそんな途方もない『お宝』とはな・・・」
ブリュンヒルトは少しだけ微笑んだ。
「じゃあ、君の説明を信じたとしよう」
疑り深いわねえ、とブリュンヒルトが苦笑するが、俺は続ける。
「あの粘土板の秘密を、米軍は気付いているという事か?」
「気付いているでしょうね。ただし解読は出来ていない。でも一番厄介なのは、すでに部分的にとはいえ解読出来ている奴ら・・・」
「?」
「今やアメリカ軍が最も恐れている相手。あの粘土板を解読し、現生人類未到達技術をを使ったSFのような兵器を登場させた連中・・・」
「それは?」
喉がカラカラだ。
「ヴァチカン。すなわちローマ教皇庁〈クーリア・ロマーナ〉」
「は? なんだって聖職者が?」
「現代は中世以来、世界的な宗教紛争が絶えない受難の時代よ。そこを力で制することを考えていたクーリア・ロマーナの目の前に、ある日タブレットが現れた・・・ってところでしょうね」
「『タブレット』? あの粘土板のことか?」
「そう、あれは『タブレット』というの。そしてわたしは遥か昔から『タブレットの守護者〈ディア・マギア〉』であり、世界に散ったタブレットを回収し続けることがレーゾンデートル」
「自分が世界一の軍事超大国でなければ気が済まないアメリカも、遅ればせながらタブレット確保に走ったというわけか・・・ただし、どうにも解読出来なかった」
「そのとおりよ。で、これからがこの話の核心なのだけれど」
ブリュンヒルトがこちらを指さし、
「ドクター。あなた、タブレットを持っている限り襲われることになるわよ」
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