第56話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(14)
文明って・・・普通は創成期があって、最盛期を迎え、衰退期に移る。もちろんそれに伴って技術も、誕生から発展を迎えるというのが普通のイメージよね?
でも文明の創成期からいきなり技術のピークが現れるって・・・どういう事なのかしらね? その後どの技術も、発達はしているけれど微々たるものよ。むしろ初期の技術を維持出来ていない文明すら多い」
「・・・」
返す言葉が見当たらなかった。
「ね? あなたなら薄々気が付いているんじゃないの?」
「『どの文明の始まりも、他者から優れた叡智を授けられた』って考えると説明がつくわ」
無意識にごくりと唾をのんだ。
「・・・では、シュメールはどう説明する?」
「良い質問ね。シュメールのルーツも同じなのよ。さらなる太古の賢人から技術を授けられた・・・だけど、ある出来事でその痕跡が消されてしまった」
稲妻に打たれた。
なるほどそうだったのか!
「・・・『ノアの箱舟』の大洪水が痕跡を消したってワケか」
その回答を聞いて、ブリュンヒルトは顔を輝かせる。
「そのとおり! 大洪水は歴史的事実なのよ。頭のいい人って好きよ!」
だが、すぐに「でね、ここがポイントなのだけれど」と先を続ける。
「西郷、あなたの持っている粘土板はシュメールの産物なんかじゃない。むしろシュメールに与えられた知識、すなわち『超古代の叡智の一部』なのよ」
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。あれには、今から一万二千年以上昔の超古代文明の技術が記されている。現生人類が未だに実現出来ていない、素晴らしい魔法の様なテクノロジーが満載なのよ」
周囲は大博物館らしく、ひっきりなしに観光客が行き来して賑やかなのだが、周囲の時間だけが停止したような気がした。
そのくらいの衝撃だ。
ブリュンヒルトの話を聞いている間、ただ感心していただけではない。
頭脳を総動員して、話の整合性をチェックしていた。
結論として、一切の潜入観念を捨てて聞きさえすれば、彼女の話に論理的なおかしさは無い、と感じた。
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