第53話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(11)

 少なくともアルティフィキャリス自ら、ここにいる必要があると言うのであれば、そうなのだろう。

 アルティフィキャリスは賢者でもあるのだから、その意向を簡単に無視するのは得策ではないし、彼女がここにいる事により、どのような意味があるのかを見届けなければならない。

 たしかにスレイヴのアシストが当面無くなってしまうのは、タブレット回収に痛手だが。

 一方、驚いたのはタブレットのことだ。

 まさかニネヴェにあったタブレットが、ここにいる西郷という研究者に持ち込まれていたとはね、これが分かっただけでも収穫だ。

 それで、クーリア・ロマーナの動きがおかしかったのか。

 結局ヴィオラは『タブレットに呼ばれた』のだ。であれば、突如東京に現われたのも不思議ではない。

『タブレットの守護者〈ディア・マギア〉』であるブリュンヒルトをマスターとして契約したスレイヴならば、むしろ正しい行動だと言えよう。

 ヴィオラが突如失踪したので、機能異常に陥ってしまったかと心配したのだが・・・その懸念に反して、狂っているとは思えない。

 たしかにいったんメモリーを失ってしまったようだが、ここのタブレットのおかげでスペックを回復しつつあるといえよう。

 ただ感情が顕現してキャラも変わってしまったのは、アルティフィキャリスが自律的に進化を図っているということなのかもしれない・・・。

 さて、とりあえず西郷が持っている至高のタブレットを、どうやって取り戻すか?

 ◇◇

 十分ほどでコンビニから戻った俺は、玄関に立ち尽くした。

「えーと、どちらさん?」

 そりゃあ、さすがに戸惑うでしょ。

 絶世の美少女がふたりに増えているんだから!

 すると、新手の金髪碧眼の少女がこちらに向き直り、優雅に微笑む。

 佇まいだけで、どこかしら気品が滲み出ているのがすごい。出自が凄いのか・・・?

「はじめましてドクター西郷。わたしはブリュンヒルト・パレオロゴス。そうね、何者かというと・・・ヴィオラのマスターっていうところかしら」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る