第48話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(6)

 一角には、ツァイツラー枢機卿とサネッティ司教が陣取っており、モニターを眺めてしきりに議論している。

 時折部下が、電文やグラフデータを紙に出力して届けている。

 多数のモニターにはそれぞれ、タブレットを警護している日本国防軍の展開状況や装備を映し出し、状況に応じて刻々と変化を反映している。

 アメリカ陸軍についても、同様にモニターへ映している。

 当然、両軍の指揮官についてもすでに把握しており、内田とモーデルの性格・軍歴等パーソナルデータを入手している。

 少なくともNSAのレベルと同等か、あるいは凌駕さえしているかもしれない情報収集能力によって、日米両陣営は丸裸にされている。

 PCでは、取得した画像データ・音声データ・音声以外の通信データをすべて収集出来ており、ジャミングしない限り筒抜け状態である。

 また別のモニターには、神保町を中心とした西郷の生活圏の様子が映し出されている。

 室内以外はどこでも、空軍の監視衛星が送ってくる画像で状況を把握出来ている。

 その精度は『映っている人物が持つスマホのメールが読める』という驚愕の解像度であった。

「よし、これでサイゴーの一日の行動パターンを把握出来るわね。あとは・・・」

 ツァイツラーにはあるアイデアが湧いた。


【現地五月十六日 午後九時半 ヴァチカン市国 クーリア・ロマーナ 国防総省】

 国防総省のある敷地の一角に背の低いビルが並んでいる。

 ゲートからして通常の憲兵による身分チェックのほかに、虹彩・網膜といった各種生体チェックによる入館者の同定が厳重になされる、セキュリティレベルの極めて高いエリアが存在する。

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