第47話 第四章 アルス、ロンガ、ウィタ、ブレウィス(5)
「なあ、ヴィオラ。お前がどこから来たか、とか・・・やはり思い出せないか?」
「・・・うん、でも、あの粘土板の傍にいないといけなくって・・・」
でもヴィオラが続ける。
「きっかけはたしかに粘土板だけど・・・ハチはとっても優しくて、だから一緒にいるんだよ・・・っていっても信じられないか」
「でも正直、いろいろ手伝ってくれるから・・・すげー助かるよ」
「またフォローしてくれるんだね。あのさ、そういうのが優しいってことなんだぞ?」
彼女は、いつも素敵な笑顔を見せてくれる。
俺はいろんな疑問を胸の奥にしまった。
【五月十六日 午後一時五十分 新宿 カトリック中央教会】
東京西新宿の一角の広大な敷地に、『カトリック中央教会』の七階建てビルがある。
いわば『クーリア・ロマーナの日本大使館』である。
その七階の一室にゲストルームがあり、海外、特にヴァチカンからの来賓用にしつらえられた豪勢な内装が目を引く。
ビル面積の半分以上を使った広大なスペースに、大理石を使用した調度品があり、南側の窓も大きい快適な空間なのだが、その極上の室内も今は台無しだ。
その部屋には、百インチ以上あろうかという大型モニター、各種チューナーやレコーダー、無線機、データ解析用のタワー型PCなどが数十台が所狭しと設営され、床は配線だらけになっている。
ヴァチカンの国防長官インノケンティウス十六世が「可及的速やかに司令部を設営せよ」と直々の命令を下した結果、カトリック中央教会の大勢のスタッフは徹夜の連続を余儀無くされた。
その甲斐あって準備が完了し、ツァイツラー枢機卿の軍事司令部が稼働を開始していた。
そして、ヴァチカン武装親衛隊本部とイスラエル駐屯地から派遣された隊員、総勢六十名の大半がここに詰めている。
室内は二十四時間、話し声やマシンの稼働音などで騒然としている。
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