第37話 第三章 知りたいとは思いませんか、文明がどこから来たのか。(18)

「まず提供すべき情報は、今回の仮想敵がヴァチカンの『ローマ教皇庁』、すなわち『クーリア・ロマーナ』だという点だ」

 内田は内心驚いた。クーリア・ロマーナってどういうことだ?

 今回の任務は、軍事上の重要機密の話だろう。

 だがその疑念を晴らすかのように、ヴォルフ少将が続ける。

「「クーリア・ロマーナがなぜ?」って思うだろう。なぜ世界最大宗派の総本山が敵なのか? 「だって彼らは聖職者だろう?」とな」

「そのとおりです。たしかにクーリア・ロマーナには国防総省がありますが、確かヴァチカンの自衛が主目的であり、国外の紛争中であるキリスト教派への武力支援を散発的に行う程度だと認識しています。しかも、米軍が注目するほどの軍事技術レベルの相手ではないはずです」

「その認識は正しかったのだが・・・今や訂正が必要なのだよ」

 少将は目を細める。

「ふふふ、ニンゲンが最も真面目になるのは・・・カネか宗教なんだと」

 モーデルが冗談を挟む。

 だが内田はスルーして、「・・・どういうことです?」と先を促す。

 ヴォルフ少将は、すこし声を落として、『驚愕の真実』を語り始める。

「およそ三年前、クーリア・ロマーナは、人類史上類の無い重大な発見をした」

「・・・・」

「それは、古代から伝わる普通の粘土板の中に交ざって、『現代テクノロジーを遥かに凌駕する技術が記されている全く異質の粘土板』というものが存在するということだ」

 さらに少将が続ける。

「我々はその技術を『現生人類未到達技術』、または単に『オーバーテクノロジー』と呼称している。クーリア・ロマーナは、その古代の粘土板群、いや正確には『超古代』から伝わる粘土板群を解読し、記述されている現生人類未到達技術を兵器転用することに成功した。分かるかね、この重大さが?」

 内田は唾を飲み込んだ。

「・・・つまり現代の軍事バランスが崩壊し、世界平和の均衡も維持出来なくなるかもしれない」

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