第36話 第三章 知りたいとは思いませんか、文明がどこから来たのか。(17)
リアシートのパワーウインドウが音も無く下がり、奥からモーデルの声が。
それを聞いて内田はさっと周囲を見渡し、素早くリアドアを開けて乗り込んだ。
「悪いな、忙しいところ」
「まったくだ。一見平和だが、危機が近づいているんで忙しいぜ」
レザー張りの後部座席に陣取っている黒スーツのモーデルは、にやりと笑って答える。
内田が「用件は伝えたとおりだ」と早速切り出す。
「・・・すっきりしないんだろ? なんで粘土板なんかに振り回されるのかってな」
「分かっているなら、もうちょっと情報をくれ。われわれ国防軍も自分のことを無能だと思っていないし、もちろん米軍の役に立つという自負もある。だがな、正確かつ詳細なインプットが無いと、その機能も発揮出来ないんだぞ? お互い不幸だとは思わないか?」
はっきり不満を示す内田に、モーデルは少し笑った。
「ウチダ、ネゴシエーターにでも転職したらどうだ? 理にかなったことを言うぜ」
「まったくだな。メジャーウチダの言うことは、まったくもってそのとおりだ」と、突然助手席から、笑い声がした。
聞いたことがある声。
内閣府で先日会った、真っ赤なネクタイの駐日武官ヴォルフ少将だ。
なるほど、それでマルガイのナンバーなのか。
参った、わざわざ将官が出向いてきたってのか?
内田は驚いたのだが、すぐに収穫があるかもしれないことを察知した。
突然モーデルが尋ねてくる。
「お前の国防軍でのセキュリティ・クリアランス(機密取扱資格)は?」
日本国防軍の幹部将校(概ね佐官以上)は、同盟国であるアメリカ軍同様にセキュリティ・クリアランスの取得が義務付けられており(階級により必須ランクは異なる)、その内容はやはりアメリカ軍に準じている。
「Sランクを取得済みだが」
「であれば、問題無いな」
「ここからは、私から補足情報を提供しよう。これから話す内容は、唯一君の胸中にのみ留めておいて欲しい」
ヴォルフ少将が口を挟み、説明を始める。
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