第38話 第三章 知りたいとは思いませんか、文明がどこから来たのか。(19)
「クーリア・ロマーナはこの二年間で、ゴラン高原南方での対ヨルダン国防軍、イエルサレム近郊における対イスラエル国防軍など、多岐にわたる異教徒との戦闘に参戦。当初の劣勢から短時間で反撃、敵を殲滅している。結果めでたく、キリスト教徒の生存地域を確保したというわけだ」
「・・・・」
「ヨルダンはともかく、あのイスラエル国防軍を以ってして歯が立たないというのは看過出来ん。そこでCIAとNSAが分析した結果、彼らがSF小説に登場する様な兵器を装備していたことが判明したのだよ」
「・・・・」
内田は、想定を遥かに超えた内容に言葉が出ない。
「ます高出力レーザー砲だ。我が軍でも研究中だが、空気中では減衰が大きく、かろうじて飛行物体の様な軽装対象に通じるだけだ。だが彼らのレーザー砲は、陸戦主力兵器の重装甲も簡単に貫徹する。もちろん普通に大気中での話だ」
ヴォルフ少将は、前方を見ながら話を続ける。
「次に不可視化だ。我々もようやく実装したが、兵員の衣服に特殊な素材を織り込み、周りの色彩と同化することで実現化している。つまり光学迷彩だ。その際、同化するためにわずかなタイムラグが存在する。だが彼らは、戦車一両、ヘリ一機というような広範囲、かつ瞬時の不可視化を実現している。もちろんそれは、機体の表面に塗料を塗布するとか(たとえば旧ドイツ国防軍のツィメリット・コーティング)という代物ではない」
さらに続く。
「クーリア・ロマーナは、自軍のこの不可視化装備を『インヴィジブル』と呼称しているらしい。要は学者の分析では、・・・うむ・・・ここからが難しくてな」
ヴォルフ少将は、モーデルに助けてくれと視線を送る。
察したモーデルが、すぐに助け舟を出す。
内田の記憶では、彼は理論物理の博士号(Ph.D)も持っている。
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