第16話 第二章 偽りの説教者は、タブレットを所望する。(11)
「その時の獲物が日本に?」
「そうです、国防総省最高司令部(OKV)情報部がアメリカ軍の動きを把握しました。彼らは日本の官邸を通じて、研究機関に解読させるよう依頼したようです」
ツァイツラーが答える。
「おまえたちもわかっているとおり」
上級枢機卿は真剣な眼差しで続ける。
「タブレットは遥か超古代より各時代の人類に高度な知識を授け、文明の基となってきた謎の存在だ。その内容は我々の解読結果によると、いまだかつて我々現生人類が手にしたことのない未知の技術が記述されている」
「・・・従ってタブレットの技術を吸収することは、世界で我々クーリア・ロマーナの勝利を保証する唯一にして絶対の条件だ。しかも総数が分かっているシロモノでもない。何枚出てこようと、全て我々のモノにするのだ」
『タブレット』
この現生人類未到達技術(オーバーテクノロジー)が記された粘土板群は、いつしかクーリア・ロマーナでは『タブレット』と呼ばれるようになっていた。
・・・遥かなる古代、人間に知識を授けたとされる、トート神からもたらされた伝説の書『エメラルド・タブレット』になぞらえたのである。
「もちろんです、閣下」
先月のニネヴェで、最新の起動兵器を出動させたのにもかかわらず、モーデルの咄嗟の気転に出し抜かれたサネッティが表情を硬くして答える。
「で? 戦況を聞こうか、ヴィットーリア」
「はい、幸いにしてアメリカ本土ではなく日本での奪取作戦となります。粘土板を持ち込んだ先は、日本の学芸院大学在籍のキュレーターであるドクター・サイゴーなる男と判明しました。すでに大学には潜入要員を送り込んであり、サイゴーの活動はレポートで逐次あがってきます」
やや緊張の面持ちで、ツァイツラーが答える。
ヴィットーリアの報告はいつもながら正確だ。
「ふーん・・・ちなみにさあ、そのサイゴーって奴は、我々と同程度くらいにタブレットを解読出来るのか?」
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