第12話 第二章 偽りの説教者は、タブレットを所望する。(7)
「どういうことだ?」
「ただの粘土板じゃないってことだよ。我々は、あの粘土板に記録されている内容自体について、非常に重要視している」
「?」
「ピンとこないか。まあ普通粘土板といえば、古代文明において重要と思われる歴史的事実や商業的記録を残すためのものを連想するよな?」
「そうだ」
「だが、今回持ち込んだものはそういったモンじゃない。記された内容を解読出来れば、世界の軍事バランスを一変させる可能性があるシロモノなんだよ」
「なんだと」
「そういうことだ。だから今回の任務に国防総省のお偉方まで注目している。その緊張感が、お前さんのところの内閣官房にも伝わっているはずだ。まあ彼らはその理由について皆目分からず、不安がっているとは思うが」
内田は、官房副長官がわざわざ登場してきた意味がようやく分かった。
「だが、そんな重要なものをわざわざ警備の面倒な他国の日本に持ち出す意味は? 俺は考古学には明るくないが、この分野もアメリカの方が進んでいるんじゃないのか?」
「その指摘ももっともだ。だが、我が国の研究機関では結果が出ていない。シュメールの専門家が束になってかかっても読めていないんだ」
「・・・・」
「だが、過去に一人だけ、その難解な粘土板に答えを出しかけた男がいるらしい」
「それが西郷という男なのか・・・」
内田は思い出した。
かつて西アジア地域に武官として駐留していたころ、発掘に携わっていた日本人が現地ゲリラに襲われそうだというので、部隊を率いて救出したことがあった。
そして何故だか妙に気が合って、その後飯を食いに行ったこともあったはずだ。
考古学の研究者というには、なんとも飄々とした若い男であったのを思い出した。
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