第7話 写真の人
そこで、ハッと目が覚めた。
夢?
耳には、あの人同じように、セミの声が聞こえてきた。
起き上がると、お母さんとお姉ちゃんが、談笑している。
「あら、蕾。起きたの?」
「あんた、お腹出して寝てたよ。」
そう言って、お姉ちゃんは笑っていた。
「……今、昭和何年?」
私がそう言うと、お母さんとお姉ちゃんは、大笑いした。
「昭和って!平成通り越してるよ。」
「もう令和よ。れ・い・わ!」
お母さんの言葉に、私は嬉しくなった。
「よかった!戻って来れたんだ!!」
私は、お母さんに抱き着いた。
「はあ?何言ってんだか。そう言えば、写真返してよ。」
「写真?」
ふと畳を見ると、一枚の写真が足元に転がっていた。
それを拾い上げて、びっくりした。
「古都ちゃん!?」
私が叫ぶと、お母さんとお姉ちゃんは、顔を見合わせた。
「あれ?あんたって、お祖母ちゃんの名前、知ってったっけ?」
「小さい頃に亡くなったから、覚えてないんだと思った。」
私は、写真を見て震えた。
「古都ちゃんが、私のお祖母ちゃん……」
「そうよ。結婚する前は、有坂古都って言ったかしら。」
私は、写真を抱きしめた。
「そうか。そうなんだ。」
私は、涙を流した。
「お祖母ちゃん、他に好きな人がいたんだよね。」
「まあ、そう言ってたけど……」
「でも、戦争帰りのお祖父ちゃんと結婚した。」
「えっ……なんでそこまで知ってるの?」
私は涙を流しながら、お母さんの顔を見た。
「知ってるよ。お母さんが、なぜ”乃理”って名前なのかも。」
お母さんは口を開けて、ぽかーんとしていた。
古都ちゃん。私、古都ちゃんとの約束、忘れないよ。
きっとまた、恋をする。
古都ちゃんの分まで。
ーEndー
75年前の約束 日下奈緒 @nao-kusaka
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