幕間・檜村さんの富山観光案内 

 富山は作者の出身地なので少し観光案内でも書いてみようかと。

 地味なうえにアピール力が無いのですが……なんでもふるさと納税の流出額が全国で上位にいるとかいないとか……まあ、なかなかいいところなんですよ。


 カクヨムは画像を貼れないので、画像が見たい方はお手数ですがこちらから。


https://twitter.com/snowflowerpalac/status/1757920001405968730



「帰る前に少し観光でもしていかないかい、片岡君」

「ええ、いいですね」


 富山駅に着いた時に檜村さんが言った。

 せっかく来たのにすぐに帰ってしまうのももったいない。なんか支払いは魔討士協会に付けてもいいらしいし。


「でもどこに行くんです?」

「とりあえず富山で面白いのは路面電車トラムだね。あれを見てくれ」


 檜村さんが指さす先、ガラスの向こうには路面電車トラムの停留所があった。


「駅を貫いて南北を結んでいるんだよ。駅の中に駅があるわけさ」

「それは珍しいですね」


 ただ、そのおかげで駅が吹き抜けようになっていて冬はかなり寒い……というか今も寒いんだけど。それは言わないでおいた。

 路面電車トラムもモダンな形の3両編成のものから、レトロな1台だけのものまで結構種類がある。

 

「あれに乗って北の方に行くと港に出る。岩瀬浜だね。

今はとある造り酒屋があちこちのレストランや料亭を誘致しているんだそうだ。アートギャラリーもある。昔の港町風のレトロな街並みもなかなかいい」

「そうなんですか?」


 レストランは敷居が高そうだけど街並みは少し見てみたい気がするな。


「それに駅から北に少し歩いたところの環水公園という公園にあるスターバックスは昔は世界一美しい店舗に選ばれた……らしいよ」


 そう言って檜村さんがスマホで写真を見せてくれた。芝生の斜面の上にせり出すような店舗とその周りの水路は確かにきれいだ。世界一かは分からないけど。

 春の写真だからなのか、桜が周りに咲いているのもいいな。

 

「美術館もあるし、あのあたりは散歩しているだけで楽しめると思う」

「美術館ってどんなのなんです?」


「近代美術とかデザインとか、そういうものらしい……といってもあまり詳しくないんだが。ピカソの絵とかもある」

「流石にそれは僕でも分かります」


「ただ……本当に有名な観光地……雪の大谷にしても五箇山の合掌造りにしても黒部ダムにしても富山駅からは遠いんだよ。そこが少し不便なところだね」

「ああ、そうなんですね」


 雪の大谷は崖みたいに聳え立つ雪の谷の写真を見たことがある。

 合掌造りの三角形の屋根や、放水する黒部ダムも僕でも知っているくらいには知名度があるな。


「比較的近場なのはガラス美術館かな。これならトラムで行ける。

富山は割と昔からガラス工芸に力を入れているからね。有名な建築家の人の作品だから、建物も中々きれいだよ」

「どんな風にです?」


 ガラスと富山は今一つ結びつかないけど、力を入れているのは何か理由があるんだろうか。


「木をたくさん使っているんだけど木組みが昔の城とか建物のようになっている。吹き抜けもとても開放感があるよ」

「なるほど」


「近くに富山城もあるんだが……どうせ行くなら桜のシーズンが良い。

川沿いの桜並木はかなり距離があるからね、見ごたえがあるよ」



「海もきれいでしたね」


 筧さんの病院に行った時にタクシーから見た景色を思い出す。

 広々とした青い海は日本海のイメージとは違ったな。


「まあ……この時期は荒れることもあるけどね。穏やかな時はとても綺麗だと思う。今日は運が良かった。

それに天気がいい日は立山が見えるからね、山と海がパノラマで見えるのはとてもいい」


 確かに、帰りの小さなローカル線の窓から見える右手の海と遠くに見える山は綺麗だった。


「さっき行った海岸は雨晴海岸だね。義経岩という岩と神社がある」

「何かいわれがあるんですか?」


「源義経が東北に逃げる時に雨宿りをしたという伝説があるらしい。

勧進帳(作者注・弁慶を主人公にした歌舞伎の演目)の舞台は石川の小松だからね。案外史実かもしれないな」


 檜村さんが言う。

 そう考えると結構ロマンがあるな。


「富山湾岸はサイクリングロードになっていてね、新湊の方に行けば大きなつり橋と帆船がある公園がある。

海も山も近いから立山で登山もできるし、冬はスキーも出来るアウトドアが好きな人は退屈しないだろうな。

時期によってはサーフィンも出来るらしいよ……私はできないが」


 檜村さんが言う。


「温泉もあるんですよね」


 確か森下さんか誰かがそんなこと言ってたな。


「ああ、温泉も良いよ。石川とかにもいい温泉はあるけど富山も負けてはいないと思う。宇奈月とか庄川郷とか川沿いにあるところは眺めがいいからおすすめできる。

船でしか行けない温泉もあるんだ」

「それは……なんかすごいですね。ゲームみたいだ」

「温泉は冬もお勧めだよ。雪景色を見ながら露天風呂というのは格別だ。白い雪と湯気、寒い空気と暖かいお風呂。風情があるよ」


 檜村さんが何かを思い出すかのように言う。


「まあ、どちらかというと……しばらく滞在できるほうが楽しめる場所だとは思う」



「しかし富山と言えばやはり食事を外すことはできないだろうね」

「それは知ってます、というか昨日の寿司は美味しかったですね」


 昨日の寿司は確かに美味しかった……と言っても比較対象があんまりないんだけど。


「無論、ああいう寿司屋もいいのだが、回転寿司も中々だよ。

富山ローカルのチェーンで100円均一ではないところはカウンターの中で職人さんが寿司を握ってくれるからね。手ごろな割には意外に本格的なんだ」

「やっぱり富山は魚ですか?」


 今回来るのは初めてだけど……富山と言えば魚介類、というイメージはやっぱりある。


「氷見牛とかむぎやポークとか、ブランド品もあるから肉も美味しいけど……やはり魚だろうね。

寒ブリが有名だけど白エビも中々おいしい。かき揚げとかにすることが多いね。

あとはバイ貝は県外の友達が割と好評だ。富山ローカルというわけではないようだが、意外に他県では見ないんだそうだ」

「そうなんですか」


 白エビと言うのは聞いたことが無いな。

 僕自身はあんまり貝を食べる機会がないからよく分からないけど、多分美味しいんだろうとは思う。


 貝はどちらかというと大人の味ってイメージだな。

 僕はたまにパスタで食べるくらいだ。


「あとは……げんげという魚も中々にいける」

「聞いたことないんですけど」


「ゼラチンのようなもので包まれている深海魚だよ。天ぷらにするとサクッとした衣とトロトロしたゼラチンの部分のアクセントがいいのさ」

「へえ」


 それなら食べれそうだな。東京で食べることはできるんだろうか。


「ミシュランの星付きのレストランも多いから和食だけじゃないぞ。富山ブラックラーメンの店も駅の近くにある。

それに今は駅の近くの再開発が進んで新しいお店やホテルが増えている。便利になったね」


 檜村さんが駅の外を眺めながら言う。

 広々としたロータリーにはバスが行きかっていて、その向こうには真新しい高い建物が見えた。


 ブラックラーメンはどこかのラーメンフェスで食べたことがある。

 文字通り真っ黒なスープとゴロゴロしたチャーシューがインパクト強かったな。


「結構色々あるんですね」

「どうも金沢に押されて影が薄いが……なかなか悪くないとは思う。地元びいきもあるけどね」


 檜村さんが言う。


「ただ、冬は雪が降って寒いし、夏はかなり暑いから……まあそこは難点かもしれないな」

「涼しいってイメージでしたけど」

「残念ながら違うんだよ。夏に全国ニュースでネタになるくらいには暑い」

「そうなんですか」


 そこまで話したところで構内にアナウンスが流れた。

 そろそろ新幹線がでるっぽい。


「話過ぎたね……もうこんな時間か」


 檜村さんが時計を見て首を振った。


「仕方ない……鱒ずしでも買って新幹線の中で食べよう。

これも土産物としてはなかなかいけるよ。見た目は同じだけど作っているお店によって鱒がしっとりしてボリュームがあったり、水気を少し抜いて食べやすかったり、差があるんだ」


 鱒寿司はコンビニとかでもたまーに見かける。

 赤い三角形の見た目は知っているけど、意外に違いがあるらしい。


「駅の向こうの売店で色々売ってるからね、其処で買い物をしてそのまま乗ろう」

「そうしますか」


 檜村さんが白いショールを羽織りなおした。


「そういえば、富山はワイナリーとかも多いんだよ。たしか……3件あった気がするな」

「それは結構多いですね」


「日本酒も有名なブランドがいくつかあるはずだ」

「檜村さんは飲むんですか?」

「まあ、嗜む程度にね」


 檜村さんが言うけど。

 何度か飲んでるのを見たことはあるけど、あまり強そうには見えなかった。


「君がお酒を飲めるようになったら、また一緒に来たいね、片岡君」

「はは……そうですね」



 こんな感じです。

 駅から手軽に行ける観光地が少ないのが富山観光の最大の難点な気がしますね。


 氷見は今地震で大変ですが、そこ以外は概ね問題ないので、ぜひ皆さん遊びに来てください。

 寿司はマジで旨いです。

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