第179話 梅田地下街の2日目
おはおうございます。
お待たせしました。更新再開します。
プロットは決まってるので行けるところまで行きます
◆
翌日の朝、江坂の訓練施設に集まった。
昨日の事は勿論みんな知っているらしく、微妙に緊張感のある空気が漂っている。
会議室に呼ばれて行ってみると木次谷さんがいた。
「おはようございます、皆さん。昨日は誠に申し訳ない。あんな風になるとは思わなかったので」
「いえ、いいですよ。協会のせいじゃないですから」
清里さんが軽く微笑んで言う。
「ですけど、どういう状況なのか、それは教えてほしいです」
静かだけど有無を言わさないって感じの口調で清里さんが言った。
口調は演技だけど……素で言ってるな。
「あいつらは正当討伐活動互助会を名乗っています。組織の正体は不明ですが、昨日いた三人については確認が取れました。魔討士です。東京と名古屋の大阪の」
「魔討士で、あの団体にも属してるってことですか?」
「ええ……まあ禁止規定はないので」
木次谷さんが気まずそうに答えてくれる。まあそりゃそうか。
魔討士の活動は縛りがかなり緩いし、そもそも別団体なんてものは今までなかったし。
「そういえば……一人はなんか見たことあるなって思いました」
清里さんが思い出すように額に指を当てながら言う。
「正当討伐活動互助会なる組織については調査中です。
正確な所は不明ですが……どうも50人ほどの魔討士が属しているようですね」
「あの連中の言うところの魔素を強化する研究というのは本当なんですか?」
これは児玉さんも言ってたことだ。僕の質問に木次谷さんが考え込んだ。
「勿論ここだけの話にしてもらいますが……いいですね」
木次谷さんがちょっと重い口調になって、斎会君と清里さんが頷いた。
「実は我々も
それは初耳だ……とはいえ、やっていても不思議はないか。
斎会君と清里さんが続きを促すように木次谷さんを見た。
「目下の所、既存の能力の強化方法もですが……素質がない物でも使える武器の作成を最優先にしています。素質を持つ者に頼り切っているのは問題がありますからね。
それに例えば都心なら野良ダンジョンが現れても周囲に魔討士がいますが、地方都市や僻地ではそうもいかない。誰でも使えて魔獣に対抗できる武器の開発は急務なのです」
木次谷さんが続ける。
「ただ、今の所、成果は捗々しくありません……端的に言うと上手く行っていない」
木次谷さんが口ごもりながら言う。
「当たり前ですが、
そりゃそう簡単にはできないだろうな、と言うのは分かる。
鎮定を使ってはいるけど、何処から現れているのかは分からない。刀身は鉄に見えるけど厳密に言えば鉄なのかも分からない。
風を操るのも手を動かすのとかの延長で体感的なものだ。理屈は分からない。
檜村さんの魔法もそんなものらしい。
「ただ、あの3人について調べましたが、全員乙類でした。斬撃を飛ばすなんてことは出来ないはずなんですよね」
木次谷さんが言う。
「なら能力を強化できるってことなのですか?」
斎会君が聞くけど……木次谷さんが黙った。
「もう少し情報を集めています。確認できた情報は随時共有します。
ところで今日の事ですが」
「今日もやりますよ。昨日3人でそう決めました」
そういうと清里さんと斎会君が頷いた。
木次谷さんが複雑な表情を浮かべる。
「正直言いますと有難くはあるのですが……とはいえ無用な危険にさらす可能性もあるので……なんとも言えないんですよね」
木次谷さんが気まずそうに言う。
昨日のことを考えれば、こっちを襲ってきても不思議じゃない……とはいえ梅田は人目もあるから其処まで無茶はしないだろうけど。
「僕等が決めたことです」
「ありがとうございます。協会から専属の魔討士を何人か待機させます」
◆
朝の9時ごろ、梅田の地下街に移動した。
通勤時間が終わって、地下街隣接の百貨店はまだ開いていない、少し人が少ない時間らしい。
とはいっても広い地下街の通路をスーツを着た人とかが忙しそうに行きかっていた。
昨日のオープニングのセレモニーをした場所にはまるで待ち伏せでもするように、白い揃いのジャケットを着た3人の男がいた。
白のジャケットはあの連中の隊服的なものっぽいな。
「おや。来たのか」
僕等の方を一瞥して一人が声をかけてきた。
昨日会った奴とは別だ。30歳くらいかな。
1人は天然パーマのような短めの黒髪の黒縁メガネの男だ。ちょっと濃い感じの彫の深い顔には軽薄そうというか緊張感のない薄笑いが浮かんでいる。
「せっかく変わってやると言ってあげているのに。俺達のような真剣にやっている方からすると、学生さんにアルバイト気分で戦われても困るんだよ」
その男が言って、残りの二人が頷いた。
「なんで私たちの言っていることが理解できないんだい?そう、もう少し何というか……正しいことを見極める目を持とうよ!」
なんか妙に甲高い声に大袈裟な口調で言う。なんとなくドラマとかで出てくる教師役の演技を見ているような感じだ。
どうやらこいつがリーダー格らしい。
「君たちは例えば木次谷とか、宗片のような悪い大人連中に利用されてるんだよ。分かっていないのかい?」
台本でも読んでいるかのようにそいつが喋る。なんか口を挟みにくい感じだな。
横で清里さんと斎会君がポカンとした顔でそいつを見ていた。
「高校生を利用するような悪い組織がのさばっている……それを黙って見過ごすことは出来ないから、そう。我々が立ち上がったんだ」
そう言ってそいつが胸を逸らして拳を握りしめて決めポーズっぽいものをとる。
なんか、なにからなにまで胡散臭いというか白々しい感じだな。
「では、行くぞ」
そう言ってそいつが残りの二人を引き連れて地下街に向かって歩いて行った。
「なんやあいつら……昨日の連中も大概やったけど今日のあいつの方が輪をかけておっかしな奴やな」
清里さんがそいつらの姿が消えたのを確認してから言う。
「喋り方が押し付けがましくて不快だな」
「あたしはあのヘラヘラした顔が気に食わんわ」
清里さんと斎会君が結構はっきり言う……まあ僕も概ね同感なんだけど。
僕等に話しているというより、動画配信サイト
そんな感じだった。
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