第177話 幕間 設定公開・珠桜鍛冶司鎮定

 月に一度の令和ダンジョン設定公開。

 今回は主人公の愛刀・鎮定に宿る魂、珠桜鍛冶司鎮定すおうかじつかさつねさだです。

 相変わらず本編にはあまり関係ないので、読み物としてお楽しみください。


 ……続きはもう少し待ってください。



 室町時代の人、西暦では1472年生まれ。

 出身は山城国、現在の京都にちかい山村です。

 片岡君と接触する時の平安風衣装姿と小さな小屋は、彼の生前の姿と彼が生前住んでいた住居兼工房です。


 とある豪族に仕える名工と名高い鍛冶師の家に生まれ、後継ぎとして期待されて育ちました。

 彼自身も親の後を継いで鍛冶師として生きることに不満は無く、生まれた村で技術の研鑽に励んでいました。


 一方で、親と一緒に行った都のことや世界の広さ、まだ見ぬ他国の刀鍛冶の技術への憧れも持っていました。

 とはいうものの、この時代は治安的にも交通手段的にも旅をするのはかなりハードルが高かったこともあり、鍛冶師の仕事もあり殆ど生まれた地域から出ることはありませんでしたが。


 彼は打った刀の鍔や刀身、茎に鳥や風をモチーフにした飾りを好んで入れていましたが、これは彼にとって風や鳥がどこにでも行ける自由の象徴であったからです。


 明応3年(1492年)に住んでいた村が野盗の襲撃を受け、村人は皆殺しの憂き目にあい、彼もその時に命を落とします。

 自由に広い世界を見てみたいという想い、村人を守れなかった後悔の思いがその時に打っていた彼の最後の刀に宿りました。



 形状は打刀と呼ばれるものです。反りは浅め、長さは2尺5寸(75センチ程)でこの時代の刀としては長めです。

 巻く風を象った鍔、柄頭には二つの鈴が付けられています。

 風を操る能力は彼の風や鳥への憧れに由来するものです。


 鎮定の魂が宿った刀は、折れるまでに10人の手を経ることになります。

 刀に魂が宿った時点で風を操る能力は備わっていましたが、ダンジョンの中とは違い魔素が薄い普通の日本の環境ではその力を完全には発揮できていませんでした。

 というよりその能力に気付かなかったものの方が多いのですが。


 ただし何人かの使い手は感覚的に風を操る能力に気付き、使いこなしています。

 とはいえ、作中のダンジョンで片岡君が使っているようなことまでは出来ず、風で若干間合いをのばしたり、短い距離で風の斬撃を飛ばしたり、敵の攻撃を風で逸らしたりする程度でした。


 それでも人外の力であることには変わりなく、彼らは飯綱使いなどと評されて恐れられました。


 こんな経緯で一時期は名刀として扱われ、とある西日本の武士の家の家宝として受け継がれますが、平穏な江戸時代のうちにそのことは忘れられてしまいます。

 そして、幕末の動乱期に京都の志士の手に渡り再び実戦で使われ、最後となる10代目の使い手は戊辰戦争の幕府側のとある武士でした。


 しかし彼は乱戦の中であえなく討ち死にし、刀も折れてしまっています。

 その後、その魂だけが残り、どういう経緯かダンジョンの発生後に片岡君のもとに流れ着きました。



 現在登場している意志を持つ武器、一刀斎、マリーチカと比べると一番使い手と接触しにくい装備です。

 逆に一刀斎などとは違って、使い手にはあまり多くの事は求めない、割と好みがうるさくないタイプでもあります。


 使い手に対するスタンスは、卑劣なことをせずに自分を使ってほしい、そうする限り力を貸す、というものです。

 なので、歴代の使い手の中で所謂悪党もいましたが、彼の前に姿を現すことはありませんでした。

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