第167話 吉祥寺での戦い。そして、ある団体について・下
「ふう」
隣で戦っていた銀色の髪の女の人がため息をついた。
ダンジョンの赤い光がはがれるように消えて行く。赤い光のあとから服屋さんやドラッグストアが現れて、元のアーケードに戻った。
とはいえ、あちこちの壁が壊れたりものが散乱したりしていて、さっきの焔がそこらに残っている。
家事になるんじゃないかと思ったけど、魔素が消えたせいかすぐに火が消えた。
「ありがと。助かったよ」
その人が言う。
肩くらいで切りそろえた明るい金髪には無造作に黒のリボンが巻かれている。
ちょっと目つきが悪いというか、シャープと言うか、そんな感じの女の人だ。
黒いファー付きのロングコートはいいとして、黒の水着のようなタイトな服でホットパンツ姿と、白い足が見える黒いロングブーツ。
スタイルの良さが見えるけど……寒くないんだろうか。まだ3月だというのに
「二人とも随分強いんだね。私は
なんかクールな外見と厳めしい苗字と可愛い名前が今一つかみ合ってない気がするな。
その毒島さんが僕等をまじまじと見た。
「あんたは?……って、風使いの刀使いと魔法使いの組み合わせって、もしかして、片岡水貴と檜村玄絵さん?」
「ああ……まあそうです」
まさかここでもバレるとは思わなかった。なんか本当に知名度上がってるんだろうか。
そして、なんで僕だけ呼び捨てなのか。
「あんたは強いし、それにすごい魔法だなって思ったけど、4位なら納得だわ」
うんうんと納得するように毒島さんが頷いて僕等を見た。
「ところで、セコイこと言うようだけどさ……討伐点は山分けでいい?」
「ええ、勿論」
そういうと毒島さんが安心したように息を吐いた。
「そっか、私はずっと8位だったからさ。
上位だからこっちが優先だとか止め刺したのは自分だから、とかマウント取ってくる奴にも会ったことあるんだけど……あんたたちは違うんだね」
毒島さんが言うけど……そんなことしてる人がいるのか。
◆
戦いが終わったのを見て警官の人がアーケードに入ってきた。
こっちに駆け寄ってくる。
「ご無事ですか」
「大丈夫です」
「ご協力に感謝します」
「助かりました」
そう言って二人の警察官の人が敬礼をしてくれる。
同時に周りの人から大きな拍手と歓声が上がった。
「すげぇぜ、よくあんなデカいの倒せるな」
「助かった!ありがとう」
「写真撮らせて、写真!」
「皆さん、下がってください。暫くは現場検証もありますから」
「おい、俺に一杯奢らせてくれ、魔討士さん!」
拍手と一緒に色んな声が飛び交った。
こういうのはやっぱり充実感があるな……写真はできれば遠慮してほしい所だけど。
毒島さんが手を振って声援に応えている。
警官の人達が止めてくれたおかげでとりあえずもみくちゃにされたりはしなさそうだ。
お店の人が戻ってきて散らばった商品を直したりし始める。
「ケガした人とかはいませんか?」
「皆さんのおかげで大丈夫です。迅速な対応、感謝します。お見事でした」
「何人かが転んだり人ごみに押されてちょっと気分が悪くなっていたりとか、その程度です」
警察官の人がきびきびと答えてくれる。
とりあえず特に怪我人とかはいなさそうなのは良かった。
◆
とりあえず討伐点の配分アプリを操作しておいた。
この時間だと魔討士協会の受付窓口は閉まってるから、ライフコアの提出は明日になるかな。
「これ、私が届けておこうか?」
「お願いできますか」
「いいよ、私は新宿の近くに住んでるからさ。窓口も近いんだ。どうせ明日は暇だし」
毒島さんがスマホの操作をしながら言ってくれる。
この辺の手続は段々楽になっては来ているけど、一々窓口まで行くのはちょっと面倒くさいから助かるな。
「あ、そうだ。そういえば片岡、それに檜村さん。こういう団体知ってる?」
そう言って毒島さんが一枚の名刺を見せてくれた
相変わらず僕だけ呼び捨てなのは……年の問題なんだろうか。まあいいんだけど。
名刺には正当討伐活動互助会なる団体名と見たことのない名前が書いてあった。
裏にはQRコードが印刷されている
僕は見たことが無い。檜村さんの方を見るけど、檜村さんも首を振った
……魔討士協会に何か関係あるのか、それとも伊達さんの会社みたいなものなのかな。
「いえ、知らないです」
「そっか……上位なら知ってると思ったんだけど。なんか先週声かけられたのよね。こっちに加入しないかって」
毒島さんが名刺をコートのポケットに戻しながら言う。
「で、どうしたんです?」
「色々話聞いたんだけどさ……グダグダ御託がうるさいくせして、なんかあんまり稼げそうじゃなかったから断った」
毒島さんがあっけらかんと言う。
「いやね、別に金のために戦ってるとかじゃないんだけどさ……どうせ同じように戦うなら実入りは多い方がいいでしょ、私はフリーターだし。
で、なんか女性をメインに声かけてるみたいなこと言ってたから、檜村さんはどうなのかなって」
「いや……私も聞いたことが無いな」
檜村さんが困ったように言う。
「そっか……なら魔討士協会に聞くのが一番かな。でも、断ったからどうでもいいかな」
そう言って毒島さんがもう一度スマホを見た。
「おっと……私はもう行くわ。ありがとう、片岡、それに檜村さん。
一人だと勝てるのかこれ、とか思ってたから助かったわ。臨時収入にもなったし……また一緒に戦えるといいね」
「ええ、こちらこそ」
「じゃあ、縁があったらまたね」
クールな顔に爽やかな笑みを浮かべて毒島さんが軽く手を振ってくれる。
そのまま駅の方に歩いて行った。
◆
毒島苺はキャラ募集に応じてくれた方のキャラです。
某ソシャゲの新宿の人っぽい19歳、フリーター、元ヤン。
甲の7位に上がったばかり。火を操る能力を持つ長杖使い。
杖で殴った時に炎を出して威力を増したり、作り出した炎を塊や帯の様にして飛ばすこともできます。
威力は高めですが、操作精度に難があり時に周りを巻き込んでいたりします。
能力の性質と本人の性格も相まって攻撃型の戦闘スタイルです。
野良専でパーティには加入していません。
見た目に反して名前が可愛いことを気にしており、からかわれると怒ります。片岡君は地雷をすんでのところで回避した。
募集キャラは引き続きゆるく受付中です。
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