それでも道は続く


「何してんの?」


書物を乗せた亀は答えない。

それらすべて私が書いてきたものだ。

そして、新しい一冊を積もうとしている。


「ずいぶんと重そうだね」


亀は首を横に振った。

甲羅に載せた作品はうず高く積みあがり、小さな塔と化している。


そりゃ、そうだよな。

重さなんて気にしてたら、字書きなんてやってらんないよな。


「ね、これからどこに行くの?」


亀は何も答えない。

行き先が分からないからか、すでに決まっているけど教えたくないのか。


予定は未定っていうもんな。未来なんて見えないもんだし。

最悪の結末を迎える可能性だって、考えられる。


物語のピリオドを打てないまま、おっちぬ可能性だってある。

それが私の考える最悪の結末だ。


この世界は絶望に包まれて、誰もが不安を抱えて生きている。

明るい未来なんて、とっくのとうに諦めたのに。

戻れない過去は言うまでもない。


それでも、胸の高鳴りは止まらない。

何でだろう、手元にある言葉は死なないからかな。


亀は答えない。

興味なさげに書物を揺らしながら、ゆっくりと前に進む。


崩れないように新しい本を背中に乗せた。

これからもっと積み上げていけば、月の裏まで歩いて行けそうだ。


私も一緒に歩いていくよ、死なない言葉と共に。


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