それでも道は続く
「何してんの?」
書物を乗せた亀は答えない。
それらすべて私が書いてきたものだ。
そして、新しい一冊を積もうとしている。
「ずいぶんと重そうだね」
亀は首を横に振った。
甲羅に載せた作品はうず高く積みあがり、小さな塔と化している。
そりゃ、そうだよな。
重さなんて気にしてたら、字書きなんてやってらんないよな。
「ね、これからどこに行くの?」
亀は何も答えない。
行き先が分からないからか、すでに決まっているけど教えたくないのか。
予定は未定っていうもんな。未来なんて見えないもんだし。
最悪の結末を迎える可能性だって、考えられる。
物語のピリオドを打てないまま、おっちぬ可能性だってある。
それが私の考える最悪の結末だ。
この世界は絶望に包まれて、誰もが不安を抱えて生きている。
明るい未来なんて、とっくのとうに諦めたのに。
戻れない過去は言うまでもない。
それでも、胸の高鳴りは止まらない。
何でだろう、手元にある言葉は死なないからかな。
亀は答えない。
興味なさげに書物を揺らしながら、ゆっくりと前に進む。
崩れないように新しい本を背中に乗せた。
これからもっと積み上げていけば、月の裏まで歩いて行けそうだ。
私も一緒に歩いていくよ、死なない言葉と共に。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます