甲羅の上にも

長月瓦礫

甲羅の上にも



港の音色は 誰かの誕生を祝い

ておくれだった世界に 魂が実装されていく


スイッチ一つで終わるはずが 希望の星に導かれ

嵐に乗って異世界へ飛んで 郷愁の雨に打たれていた 




赤いリボンですべてを終わらせてしまったのならば

新しい愛を一緒に探しに行きませんか?


龍の謎も解いたのなら このままシンプルに進みましょう!

心に雨が降り続いても言えなかった たった五文字を胸に秘め 


ラジオの生放送に テノヒラ振って

新しい年が宵闇とともに始まる




試される想像を胸に抱いて 未知なる世界を文字で描く

想像を信じる力は 墨汁の一滴に匹敵するのです


亀が甲羅に背負うのは 今まで描いた文字の世界

それが積み重なって 未来へつなぐ道になる




篠突く言葉の大雨に どうして対抗できましょう

原稿という名の傘を開いて 素直に受け止めることしか

私にはできないと言うのに。


「私は小説家ですよ?」

「私の語る言葉を、どうして自分自身で否定できましょうや」


「否定する事こそ、無意味であるはずなのに」

「新しい道を言葉で切り開く」

「それが私たちの在り方ではありませんか?」




墨汁が染みた原稿用紙の上に 新たな世界が生まれた

迷子の中に生まれた それは名もなき決意


やがて宇宙へ飛び立つために 本を積み重ねる


亀の甲羅にまた一つ 書物を乗せる

新しい世界の扉が今 ここに開れた


夢にまで見たあの世界へ 私は飛び立つ

遠いあの日に残した思い出たちを背負って この道を進む


図書呈瑞 どれだけ遠回りになろうとかまわない

あの場所で待っているあの人のためならば

どんな道だって進もうじゃないか


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