第5話
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「俺はな、実は上海から釜山を経て、博多、広島、神戸を経てここまで歩いてきた。それで東にある『ブジ』ってとこに行く途中なのさ」
#へー、その『ブジ』に着たらそこに何かあるのでしょうか?
ロボ男の問いかけに影の足が止まった。
ロボ男が追い付いて停止する。
止った影がゆっくりと首を回転させてロボ男を見る。
「そこで『あいつ』に会うのよ」
#あいつ?ですか?それは何でしょう?
問いかけに答えず、影が歩き出す。
それで慌ててロボ男が動き出す。暫く無言のまま影とロボ男は進んでいたが、やがて小さく影が言った。
「『あいつ』っていったら、あいつじゃねぇか」
影が困惑するように言う。
#『あいつ』ですね、了解しました。では一緒に『ブジ』で『あいつ』に会いましょう。よろしくお願い致します。
ロボ男が答えると、砂漠の上を風が吹いた。
砂埃が舞い上がり、その中に黒い三角形の薄い形が見える。
それを見た影が慌てて言う。
「いっけねぇ。お前を砂の中から取り出すのに時間を取っちまったのと、南へ歩きすぎた為か、西風に乗った『夜』が近くまで来てやがる。ロボ男お前は知らないだろうがそいつは『夜』が近くに来ていることを現す『夜風』ってやつだ」
影が急ぎ足で歩き出す。
「身体が細くなる前に先に急いで進まなきゃならねぇ」
言ってから向かい風の中を力強く前へ前へと影が進んでいく。
時折、砂埃がロボ男の金属のボディを叩く。
互いに暫く無言で進んでいくと、やがて「奈良」という文字が見えた。
そこでロボ男が影に向かって言った。
#影様、質問です。どうして『夜』が迫って来るのは駄目なんですか?
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