第12話

(12)


「やった!!砂嵐を抜けた。『夜』を吹っ切ったんだ」

 影が歓喜の声を上げる。

 しかし、突然ロボ男が失速して墜落すると砂漠の急斜面に滑り込む様に音を立ててめり込んで転がった。

 砂の中を影とロボ男が転がり、やがて音を立てずに止った。

 ゆっくりと砂を払いながら影が起き上がる。


「おい・・ロボ男・・」

 

 砂に半身埋まったまま、ロボ男の頭部が回転して影を見た。

「どういう事だ?お前、一人ぐらいは乗せて飛べるタイプなんだろう。それが何で失速して墜落すんだよ」

 影が肩を震わす。


 #すいません。良く分からないですが、失速してしまいました。


「馬鹿野郎!!お前は一体何のためにここに居るんだよ!!俺は期待してたんだぞ!!もし『夜』が迫ってきたらひとっ飛びに引き離してくれるとよぉ!!」

 言い放った影に風が吹く。見れば引き離した砂嵐がそこまで迫ってきており、はっきりと『夜風』の三角と後ろから両手を広げて迫りくる『夜』が見えた。


「ああ・・駄目だ・・」


 影がうなだれる。全身が震えていた。


「こんちくしょー!こんちくしょー!何とかここまでやって来たのに!!」


 砂嵐が影とロボ男を再び包み込む。もう、これから訪れる悲劇から逃れる手立ては見つからなかった。

『夜風』が無数に見え、それが影のからだに一枚、一枚と付着していく。

 

 影は唯、なすが儘だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る