第9話

(9)


 心なしかその後の影の歩みは重くなったようにロボ男には見えた。

 口数も少なくなったがそれが歩みを進ませることになり、やがて砂に埋もれた標識が「名古屋」と書かれている場所に来た。


 突然、影が言った。

「おい、ロボ男。お前との旅はここまでだ。後は一人でなんとかしな」

 言うと影は静々と歩いてく。

 慌てたロボ男が速度を上げて影に追いつく。


 #どうしたんです?どうも影様らしくない。陽気さもなくなって身体の調子が悪いのでは?


 ピピと音がして赤外線が影に照射される。それに慌てて影が言う。

「おいおい!!何すんだ。火傷しちまうだろう!!」

 手で赤外線の照射された箇所を手で払う。ロボ男も慌てて赤外線を止める。


 #あ、そうでした。影様は有機生命体ではありませんでしたね。赤外線の病原体感知機能は使えませんでした。


「あったりめぇだろうが。こっちは本当に火傷しそうだったぜ!!影が火傷なんて聞いたこと無いが」

 しかし影の身体が一部焦げるようになっている。

「見ろ!!穴が開いた」

 

 ロボ男の頭部が360度回転する。


 #申し訳ありません。影様


「まぁ・・いい」

 不服そうに影が言うと、ふん!と力強く言った。

 するとその穴を見る見るうちに黒い影が覆ってゆき、やがて見事に穴を修復して元通りになった。

 #すごいですね!!


 ロボ男が歓喜して頭部を回転させる。



「まぁ、影だからな」

 言ってから影が歩き出す。

 その後をロボ男が付いてゆく。



「ロボ男」

 影が言う。

「もし、もう一度あんな真似したら・・、もうついてくるなよ」


 ロボ男が頭部回転させて無言で答えた。

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